積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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dystopia

 この週末は、次回作のコンセプトノートを作成していました。
 あらすじとか、主要登場人物とか、キーワードとなる用語設定とかを取りまとめたもので、Wordで組んでみたらここまでで26頁を越えてしまった……orz。
 まぁ、遊び紙で白紙の頁も含んでるし、見やすさ優先で文字詰めゆったり気味に組んだので、このボリュームなんですが。
 基本的に今回参加するアンソロ本の編集サイドに提出する企画書みたいなものですので、当面、公開する気はありませんが、当のアンソロ本発行時に販促物として利用しようかなと思っています。
 
 で、そのお話なんですが。
 ちょっとだけ先行して内容に触れると、今度の作品は「未来予知」をテーマとしたお話です。
 別に超能力や魔法の話ではなくて、あくまで現実の技術の延長線上のお話。センサー技術やデータベース技術の延長線上として、コンピューターに「未来予知」をやらせるようになった時代のお話です。厳密には「未来予測」というべきかもしれませんが。
 それと同時に、このお話は「10年後」の東京を舞台としたお話で、その意味でもこの作品自体が作者の「未来予知」であるという構造にあります。
「10年後」──たった「10年後」です。
 なので、SF的な突飛なガジェットは出せません。
 ですが、既に現実にある様々なガジェットの延長線上にあるものを活用することで、SF的な面白みは出せるんじゃないかと考えています。
 それは自分が同人活動を始めた時に掲げたコンセプト「We are Living in Future Age!(僕らは未来に生きている!)」に通ずるイメージです。
 その意味で、原点回帰的なお話になるのかなと感じています。
 
 とは言え、その「10年後」の世界をイメージした時、あんまりハッピーな世界観になりそうもないのがなんとも。
 現実の日本が既にディストピアみたいなものだからなぁ。
 確かにポリスアクションなので、社会の明るい側面を描く話ではないこともあるんですが。
 それでも、読了後には何らかの希望が残るようなお話にはしようと思っています。
 ひとまず、乞うご期待、ということで、ひとつ。
 

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第11&12回:まえがき

 
 連載第6回目。
 カオ皇子との再会、そして明かされる真実……というお話。
 
 今回は、第12回分の始めの方で明かされるカオ皇子の正体がキモと言えばキモなんですが。
 いや、一応、この作品は「恋愛小説」なんですが、これを読んだ知人から、
「どこの世界にこんな展開する『恋愛小説』があるんだよ?」
「……いや、船戸与一とかだと、こういう設定のキャラは大抵、この手の正体に決まってるし」
船戸与一は恋愛小説家じゃねぇ」
 ……などと言われてしまいました(ぎゃふん)。
 
 うん、まぁ、自分的には「恋愛小説」のつもりなんですけどねぇ。
 理解されないなぁ、なかなか。
 作家への道は険しいですね(とほほ)。
 
 次回は連載最終回、フェリアとカオ皇子の二人の運命の行方は……?
 乞うご期待。

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第11回

0-11

 
 カオが入院しているという診療所に到着したのは、既に深夜に近い時間だった。
 今にも倒壊しそうなその古びた診療所に駆けこむように足を踏み入れたフェリアは、診療所内に唯一設けられた病室にカオの姿を見つけた。
「やあ、ようやく婚約者(フィアンセ)のご到着だ」
 そう言ってフェリアを迎えたのは、カオのベッドのそばに腰かけた黒いスーツ姿の中年男だった。小柄ながらがっしりとした体躯で、にやついた笑みと対照的に凍りつくような酷薄な目をした男だった。

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義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第12回

0-12

 
「この辺でいいでしょう」
 診療所を出て、松葉杖をつきながら数分ほど歩いた場所にある広場の真ん中で、カオは立ち留って言った。
 辺りに人家はなく、言うまでもなく街灯もない。遠くに診療所の灯火(あかり)がぽつんと見えるだけだ。
 本当に一切の灯火を排した夜の闇が、これほどに密度を持って重く迫ることをフェリアは初めて知った。
「何で、こんな場所へ……?」
 診療所を出る際に一声掛けたとは言え、テレサも心配しているだろうと思いながらフェリアは訊ねる。
 その問いに、カオはそっけなく答えた
「あの病室は盗聴されていました」
「え……?」
「盗聴」──? 何故、そんな単語がこの場に出て来るのか?
 混乱するフェリアをよそに、カオは淡々と感情の失せた口調で続ける。
「どうせここも近くで兵士が聞き耳を立ててるんでしょうが、こんな見通しのいい場所ではすぐそばまでは近づけない。小声で話す分には大丈夫でしょう。それに今からでは録音装置の準備が間に合わない。録音さえ残っていなければ、後でどうとでも言い抜けは出来る」
 ぎょっとして周囲を見廻すが、真っ暗で何も判らない。見晴らしも何も、手を伸ばした先も見えそうにないこんな暗闇の中で、カオには周囲の様子が判るのだろうか。
 カオは無表情に遠くへ視線を向けている。周囲の闇に潜む兵士達よりも、目の前にいるこの青年の姿さえ、しっかりと凝視していないと見失ってしまいそうだった。

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