『ハチミツとクローバー』第4話「彼と彼女が揺れ動く」
ハチミツとクローバー (2) (クイーンズコミックス―ヤングユー)
- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2002/08/19
- メディア: コミック
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そして、理花を巡る男二人の出口のない恋もまた痛ましい。
無論、一番ずるいのは女の方だ。決して受け入れるつもりもない男達へ、憂いを秘めた表情を向け続けること残酷さを恐らく彼女は知っている。知っていてそれを続けてしまうのは、やはり彼女が女であるからだろう。
そしてそのずるさも、残酷さも、出口のなさまですべて承知で、その場から立ち去ることの出来ない男たちは馬鹿の極みだ。この馬鹿どもは、時を止めてたたずむ寡婦の美しさに見惚れて、己の時間まで止めてしまったのだ。しかもその己の馬鹿さ加減まで含めて、酔い痴れているのだから始末に負えない。
この3人は放っておけば何十年でもこのままだろう。
この閉塞した、しかし強固な3人の関係性の空間を打ち破るのは、生半可なエネルギーと覚悟ではできまい。鉄人のふたつ名を持つ山田さんでも、相当に苦労するはずだ。あるいは彼女もまた、時を止めた者達の輪の中に飲み込まれてしまうかもしれない。
それでも誰かが、時間を止めて生きることの愚かさを訴え続けなければ、彼等彼女等の凍りついた時間が融けて動き出すことはないだろう。それは山田さんひとりの役割ではなく、森田や竹本やはぐ達、周囲の人々、皆の手助けが必要となるかもしれない。
あるいはこの物語は、その瞬間に向けて紡がれてゆく物語なのだろうか。
原作を読まない自分には何とも言えないが、あえて急いで続きを知りたいとも思わない。物語には、それを語るに相応しい時間があるのだから。