『週刊少年サンデー』25号
高橋留美子『犬夜叉』
冷酷無情な孤高の魔人として登場した殺生丸の心に、無惨散った神楽への憐憫の情が、本人さえ気付かぬうちに生まれていた──あぁ、あかん、思わず泣きそうになった。こういう氷のような非情な魂が、人間性を得て変化してゆくというノリに弱いのよ。
しかし、桔梗と琥珀の心の交流といい、とても並みの少年マンガで語られるレベルの心理領域ではなくなってきてるな。10年掛けてこれだけ深い領域まで物語を引っ張ってきた高橋留美子の作家としての底知れなさにこそ、戦慄すべきかもしれない。
畑健二郎『ハヤテのごとく!』
今週のツインテール・サキさんを光さんに捧げます。
えぇ、存分に萌え狂ってください(笑)。
(ストーリーが連載開始以来最大の山場に差し掛かってるのに、言いたいことはそれだけかいっ!(爆))
藤木俊『こわしや我聞』
国生さんの巫女姿とか、修行場まで押しかけるGHKの面々とか、途中で捨てられる番司(笑)とか、我聞の代返する中之井さんとか、小ネタをこれだけ惜しみなく叩き込んで、まぁ、面白いは面白いんだけど、どうもこう今一歩ドカンと来るものが足りないんだよね。
何だろう。小ネタ大ネタ含めて、振ってくるネタがお約束ではあっても読者の予想を裏切るものが少ないからなのかもしれない。
作者の誠実さとか、頑張りはよく伝わってくるんだけど。
西森博之『道士郎でござる』
今週のサンデー最大のインパクトはこの作品。
以下、ほのめかし程度ですがネタバレになりそうなので、「続きを読む」以降で。
ネタバレになるので詳しく書けないが、健介殿vsワルモノ鈴淵の対決の緊張が極限まで高まった瞬簡に、ページをめくった先にぶちかまされた「あれ」には、真剣に笑い死ぬかと思った。
しかも凡百のギャグ漫画家ならそこで終わるところを、絶叫とともにパニックが拡大してゆく様までしっかり描いてのけて見せるものだから徹底している。
ギャグも戦争と一緒で、読者(てき)に衝撃を与えたらすかさず戦果を拡大するのは、まったく正しい定跡(セオリー)です。
しかしまぁ、アニメ化までされた長期連載を2本も円満終了させて、なお枯れもせず少年誌の第一線でこれだけのインパクトのギャグを放つ。この西森博之も作家として円熟の巧みともいうべき域に達している。こないだの「ポックル星人」も凄いネタだったよね。
今日取り上げたあだち充も高橋留美子も、少年誌作家としてとっくに「あがり」になっていてもおかしくない年齢とキャリアなのに、若手を寄せ付けないほどの腕前を見せつける──サンデーの若手はつくづく大変だなぁ。