積読日記

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東郷 隆『銃士伝 (講談社文庫)』

銃士伝 (講談社文庫)

銃士伝 (講談社文庫)

 長篠の合戦に従軍した長岡家(後の細川家)の銃隊の従軍記から太平洋戦争でのペリリュー島の狙撃兵の話まで、日本人と銃を巡る九つの物語を収めた短編集。
 著者の東郷 隆は若かりし頃にアフガン戦争に従軍して、当時西側では実在を疑問視されていたAK-74*1を写真付きでスクープした人だけに、本書以外にも日本人と銃や火砲をテーマにした作品を多く上梓している。
 その意味で、著者のライフワークともいってもいいテーマを凝縮した作品集だけに、銃火器に関する精妙な薀蓄に加え、戦場の非情さや哀しみ、おかしみ(ペーソス)といった辺りまで見事に描き出している。
 
 個人的には最後のペリリュー島の日本人狙撃兵の話『木の上』が一番好きだけど、しかし「電信鉄砲」*2とかよくそんなネタ見つけてくるよなぁ。
 著者の博覧強記ぶりには、改めて脱帽ですな。

*1:コピーを含めると史上もっとも量産されたライフルである、旧ソ連自動小銃AK-47の小口径(5.56ミリ)弾仕様版。単純な小口径化だけかと思われていたが、彼のレポートにより機関部にも大幅に手が入っている新型銃であったことが確認された。詳しくは同じ著者の『戦場は僕らのオモチャ箱』を参照のこと。

*2:明治初期、電信の敷設が始まった頃、電線を切ったり、銅線を奪ったりする強盗へ対処するため、見廻りの電信局職員は拳銃で武装していた。その官給品の装備拳銃のこと。