『true tears vol.1 [DVD]』
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古き良き時代の少女小説を彷彿させる世界観が素敵。
氷室冴子以前の……って、判る奴いないか。
先日の『空の境界』のレビューでも触れた「判りやすさ」という点で言えば、この作品は「判りにくい」作品です。
複数視点、複数モノローグを多用して、登場人物たちの「本音」の部分は視聴者にはわりと判りやすく推察することができながら、登場人物間のコミュニケーションが微妙に齟齬を起こしているので、先の展開が「判りにくい」。
いきなり機嫌を悪くするヒロインに「何でこうなるんだろう?」と主人公同様に首を傾げる感覚は、しかし思春期の恋愛とはそういうものではあるよね。
そして物語の深層で静かに存在する親達の世代の確執と悲劇の予感。
歳相応の男の子らしく自分の廻りで何が起こっているのかまるで見えていない主人公の周囲で、物語がゆるやかに動いてゆく。
華やかな恋愛物語であると同時に優れた少年の成長譚(ビルディングスロマン)を思わせる感覚が、「判らない」からこそその先へと視聴者を惹きつける魅力となるのです。
さて、これから後半戦。
このまま成長譚(ビルディングスロマン)として進むのなら、さまざまな衝撃的な事件を通して主人公の視野や世界観が広がってゆく展開が待ち受けているのでしょうけど……さて。
その意味では、別にハッピーエンドでなくてもいい気もするんですけどね。