積読日記

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島本和彦『アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)』

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

 80年代初頭、大阪の芸大に通う1回生、焔 燃(ホノオ モユル)は、胸いっぱいの野望と根拠なき自信に満ちた、まぁ、よくある調子づいた若者であった。
 だがこの時代、『少年サンデー』では高橋留美子がデビューし、あだち充が少年誌に活動のフィールドを移し、細野不二彦がやがてくるブレイクに向けて牙を磨いていた。
 そして同じ大学には、やがてアニメ・マンガの世界でそれぞれに時代を代表する作品を生み出す若者たちが肩を並べていた、そんな時代──
 だが、いまだ何者でもない主人公は、先人の作品に尊大な講評なぞ勝手に付けたり、書き出してもいない作品でいずれ天下を取るつもりの妄想に浸ったりするなど、しょうもない日々を過ごしながら、まぁ、それなりに世間や周囲の仲間達の活躍から感じたり学んだりしてちょっとづつ成長している……のか?
 
 と、いう島本和彦の自伝的作品。
 年齢的には自分より少し上の世代のオタク話なのだけど、この手の青春像はいつの時代でも大体同じ──なのかな。大正年間の文士きどりの若者の青春と、80年代の芸大の漫画家の卵と、90年代の創作文芸でくだ捲いてた自分とでは本質的に大して変わらないような気もするのだけど、今の携帯世代の20代の青春が同じと言い切る自信がちょっとない。
 ……いや、まぁ、それを言い出すと、下の世代には何も言えなくなっちゃうんだけども。
 
 それはさておき、さすがはベテラン、島本和彦だけあって、青春のダメさ加減が実に魅力的に描かれていて素晴らしい。
 ただお話はまだまだ序章でしかないので、この後、夢や恋愛に思いっきり挫折して尊大な自尊心が木っ端微塵にぶっ飛ばされるところまで、是非とも描き続けていただきたい。
 だって、「物語」はいつだってそこから始まるものなのですからね。