積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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三浦展『ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)』

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)』の著者による、地域文化が衰退して均質化(ジャスコ化)が進む日本の地方の状況を指摘する本──らしい。
 ……いや、先週末に近所の新古書店で他の本といっしょにまとめ買いして、まだ積んだままなので、例によってレビューというよりタイトルから連想されるぐだぐだトークをこれから始めるわけなのだけど。<おい。
 
 で、あっさり故郷を捨ててろくに帰省もせず、東京のオタク文化にどっぷり漬かって婚期も逃しかけてる自分がこのような話題に触れるのはおこがましいにもほどがあるのだが、10年ぶりに親父の葬式で実家に帰った際にもっとも衝撃を受けたのは、子供の頃にはいつでも人で溢れ返っていた商店街が見事にシャッター街と化していた風景だった。
 それには小泉改革の負の側面だの、地方行政的な地域振興の失敗だの、地元の商店街の世代交代の失敗だの、まぁ、理由はそれぞれあるのだろうけど、少なくとも地域それぞれの特色のある「文化」を維持できるだけの「金」が廻らなくなっているのだということは言えると思う。
 そうした状況の中で、低コストで最低限の資本主義消費サービス(それはつまりTVで流れている「東京生活」イメージの再現)を提供しようとすれば、ジャスコに代表される大規模量販店とカラオケとファストフードとモータープールで構成されたショッピングモールがぽつんぽつんと存在するだけで事足りてしまい、またそれ以上のもの(地元の商店街など)の存在を許す余地もまたない。
 気が付けば、日本中、どこへ行ってもジャスコを中心とした似たような風景ばかりという薄ら寒い状景が広がっているのだ。
 
 これは実は日本だけの問題ではなく、米国ではジャスコの代わりにウォルマートが地域社会の均質化の象徴とされている。特にウォルマートは巨大な購買ネットワークを背景に強力に仕入れコストを抑制し、従業員の給与も抑え込む。「消費者の要望に応える」というお題目の下に、地域社会から徹底的に財を吸い上げ、地場産業を圧迫し、地域文化を均質化して貧困へと追いやっている。
 日本の場合は、幸か不幸かさまざまな規制のおかげで量販店にそこまでのパワーはないのだが、基本的な方向性は軌をいつにしている。
 これは結局、「グローバル化」と言いつつ、私たちはその基盤となる軸を「資本主義」以外に見出せていないからなのだと思う。
 
 しかしそれで納得したからといって、そこに住まう人々の魂が救われるわけではない。
 こうした寒々しい状況の中で、しかしそこに生きる人々が誇りを持って生きてゆくには、やはり「物語」が必要なのだろう。
 だが、それは目の前の状況からただ目を背けるためのものではなく、それをまっすぐ見据えて自分達の生活や日常を肯定する「物語」でなくてはならない。
 今こそ本当に、その地方、その地方の文芸復興が望まれる。
 ……まぁ、そうは言っても、人もいない、金もないではなかなか難しかろうとは思うが、地方の作家さんには是非とも頑張ってもらいたいものです。