積読日記

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原作:レイモンド・ベンソン/翻訳:富永和子『メタルギア ソリッド (角川文庫)』

メタルギア ソリッド (角川文庫)

メタルギア ソリッド (角川文庫)

 密林さんから本日到着。
 来月にはゲーム本編の新作『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(通常版)』も出るし、 伊藤計劃のノベライズ『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』も出るのだけど、その露払いとして出たのが初代『メタルギア ソリッド』のノベライズである本書。
 作者も映画版『007』のノベライズやゲームシナリオなどを手掛けた人らしく、ミリタリーやアクション描写も海外冒険小説風で悪くない……のだが。
 まだまだ序盤しか読んでないので、結論を出してしまうのはあまりに早すぎるのだが、いや、これはこのスタイルでノベライズして成功だったのかどうなのか、ちと微妙な気が。むむう。
  
 誤解なく申し述べておきたいのだが、原作ゲームもノベライズを手掛けた作家も、翻訳者も、それぞれの分野において充分に水準以上の仕事をしていると思われる。
 思われるのだが、ゲームで流す分なら全然「有り」の要素である「超能力兵士」だの「シャーマン兵士」だの「サイボーグ忍者」だのという少年マンガみたいな設定が初手から普通に出てくる一方、「START2(第二次戦略兵器削減条約)協定」なんて現実的(アクチュアル)にもほどがある要素が平然と出てくるので、作品のリアリティのラインをどこに引いていいのか戸惑ってしまう。
 海外冒険小説風の描写密度の高い、あるいはアクチュアリティの高いベースの描写部分と、その手のケレンの強い設定やこれまた少年マンガ風の判りやすい敵キャラの性格描写が相俟って、不思議な物語空間を醸し出しているのだ。
 これがいわゆる一般的な海外冒険小説の場合、こうした要素を含んでいたとしても、それを出すまで描写を積み重ねて説得力を増しておくのだが、この作品の場合、ゲーム準拠なためか序盤からガンガン有り有りで突っ込んでくるので、何と言うか、非常にライトノベル臭くなってしまっている。
 と言って、ちまちま説明していたら原作ゲームのスピード感が喪われてしまうだろうから、「原作準拠」を謳う限り、確かにこの辺が限界なのか。それでも原作の「ダンボール・スニーキング」をこの文体で大真面目にやられると、いろいろ衝撃度が強いのだが(笑)。
 
「海外冒険小説風のライトノベル」という点で、自分が目指しているものに近い作風の作品なので、非常に興味深いのも事実。
 それとまだ序盤なのにイベントがこれでもかと詰め込まれている物語構造には、国際マーケットに勝負を挑む作品はここまでやらねばならないのかと戦慄を禁じえない。
 しかしこの「メディアの相違による最適な物語の強度設計」の問題は、この後出る伊藤計劃版でも同様の課題として直面していると思われるので、それを彼がどのように処理しているのかもそちらの読みどころのひとつだろう。
 とりあえず、伊藤計劃版が出るまでに読み終えておきましょうか。