積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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砂浦俊一『シアンとマゼンタ (集英社スーパーダッシュ文庫)』『シアンとマゼンタ―13階段 (集英社スーパーダッシュ文庫)』

 隻眼の女子中学生・秋泉真朱(まほそ)は見えないはずの義眼で、他人の思念や電波が見える「妖視(あやかし)」の持ち主。彼女の親友で剣道少女の爽条藍姫は、人に憑りついて狂気に追い込む「陰神(いんがみ)」を祓う「つきはらい」と呼ばれる技の継承者。「陰神(いんがみ)」の見えない藍姫はひとりでは「つきはらい」ができないのだが、好奇心旺盛な真朱に引きずられるように、怪異な事件に捲き込まれて行く──
 
 作者の砂浦俊一は知る人ぞ知る電波(な人たちが主人公の)小説『僕の彼女はサイコさん』という傑作同人小説の作者でもあり、数年前からこの集英社スーパーダッシュ文庫でプロとして作品も発表している。
 ただ、これまでのメジャー作品では、彼の本来のカラーは出し切れてないような感じがあったのだが、本作ではいよいよ本領を発揮して、キャラ寄りのライトノベルのテイストと、電波に憑りつかれた人々への深い理解と哀切に満ちた世界観がいい感じに調和できてきているように感じられる。
 特に真朱の視ている「妖視(あやかし)」の世界を単純に「異世界」とせず、あくまで現実の延長線上として(今のところ)語っているバランス感覚も悪くない。一応、公式のあらすじでは「退魔ファンタジー」となっているのだが、藍姫の使う「つきはらい」の技は作中では形を変えた臨床心理療法の域を出ていないようにしか描かれていないのだ。
 また真朱と藍姫の百合百合な関係とか、アクションシーンのスピード感とか、エンターテイメントとしての洗練度も確実に増してきていて、実に喜ばしい。
 しかし、ここまで盛り上げて2巻ラストのアレは……どうするつもりだ、この後?
 本格的にファンタジーの世界観に突入してゆくのかしら。
 夏コミで本人に会ったら訊いてみようっと(笑)。