竹宮ゆゆこ『とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)』
- 作者: 竹宮ゆゆこ,ヤス
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/10/10
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とらドラ ! VS (バーサス) 禁書目録 2008年 11月号 [雑誌]
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- 作者: 絶叫,竹宮ゆゆこ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/01/27
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当初発売直後にアップ予定だった『とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)』ですが、ほぼ書き上げた時点できれいにデータが吹っ飛んでしまい、しばらく立ち直れなかったので今日まで引っ張りました。申し訳ない。
そんなわけで、気を取り直しまして。
あ、例によってネタばれ全開ですので、あらかじめご容赦を。
修学旅行での事故により、図らずも大河の真意を聞いてしまった竜二。だが、実母の元へ連れられて行ったっきり、修学旅行後も大河は戻ってこない。竜二のおうのうはただひたすらに深まり、そこへ更に、進級を控えた進路調査をきっかけに、母親ともぶつかって──
アニメもスタートし、物語もいよいよ佳境の第9巻。
前巻の引きから「母親との関係性」の話になるだろうなとは予感していたものの、竜二と泰子ママの話になるとは読めなんだ。でも、作中のカレンダー的にはもうそんな時期だし、健気な母子家庭の母と息子には、そりゃあ大問題だよね。預金通帳の残高を突き付けられて「大学なんか行けるわけねぇだろ」と息子に怒鳴られる母親の図って、やっちゃんママと同世代なだけに、読んでて泣きそうになりましたよ。格差社会、反対。
いや、基本、やっちゃんママっておバカなキャラで、しっかりものの息子に頼りっきりで、いつもへらへら笑ってるようなノンキな母親なわけですよ。でも、息子の進路だけは意固地に譲らなくて、無理して倒れちゃう。バカだよね。だけど、バカはバカなりに、それでも必死に頑張って「母親」をやろうとする。
勿論、それを単純な母性愛だけで片づけてしまうのには嘘があって、「母親」という役割を演じることにすがって自分を維持している面もあったと思う。そりゃまぁ、学歴も手に職もない家出娘のシングルマザーだものね。それは確かに「エゴ」ちゃ「エゴ」だけど、同年代からすると責められないよなぁ。
でも、そこでよりにもよって息子からその辺の危うさを容赦なく暴かれるムゴさこそ、ゆゆこクオリティ。
でね。いや、そうなんだ。
たぶん現役中高校生の電撃読者のほとんどがぴんと来ないかもしれないけど、君らと君らの両親との精神上の違いなんて大してありはしないのだ。それは人生経験が長い分だけ、諦めや、誤魔化しや、「痛み」の見積もりなんかがうまくなって、処世術には長けてくるかもしれないけど、でも傷を得て「痛い」と感じたり、それに怯える気持ちが若い頃と比べてなくなってくれるわけじゃない。それどころか、若い頃より臆病になってる部分だってある。
すぐに何もかも放り出して逃げ出したくなるのを、「でも、自分は親なんだから」と必死に堪えて踏みとどまって、君らの前にいるのだ。……まぁ、たまに本当に逃げ出しちゃう「大人」もいるけども。
結局、やっちゃんママが必死に守ってきた高須家という空間が、竜二がぶちまけたように彼女ひとりの力では守りきれないところまできちゃったという話でもある。
「子供」の試練は「親」にとっても試練であるのだよなぁ……。
で、それに対して、結局、この巻でほとんど勝手に自己解決してしまったのが、みのりんなわけなのだが……いや、この結論で決着って、まずくね?
「自分はこういう人間なのだ」と規定して、その自己規定イメージ通りに自分の恋心までねじ伏せて、最後まで演じ切るのって、そりゃあ端から見れば「強さ」に見えるけど、本質的な問題をまた隠ぺいしてしまっただけのような気がするぞ。
つか、こういう娘って、つけいる隙がなさすぎて、なかなか恋愛に発展しないんだよなぁ……。人間、壊れるべきときに壊れ切っておかないと、後がつらいんだが。
それでも何となく、本編ではこのまま亜美と一緒にフェイドアウトしちゃいそうな勢いだ……。
でも亜美はいっぺん本気で竜二にぶつかって、あの鈍感男を慌てさせるくらいのことやっておかないと。……まぁ、この期に及んで逆転の目は万にひとつもないと思うけど(号泣)。
そんなわけで、諸々人間関係も最終局面に向かいつつある『とらドラ!』。
このまま次の巻できれいに終わってしまいそうな勢いのラストではあるものの、そうは簡単に行かないだろうしなぁ。
さてさて、ゆゆこ姐さんの剛腕を信じて次巻を待ちましょう。