積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第14回

0-15

 
 その夜、私たちは星空の下で、いつまでも語り合い、時に肌を重ねて暖もりを確かめあった。
 夜が明ければ現実が襲い掛かってくる。
 私たちのささやかな誓いも、大きな世界のうねりの下では、荒れ狂う濁流に浮かぶ木の葉ほどの役にも立ちはしない。きっともみくちゃにされ、私たちの意志も踏みにじられてしまうだろう。
 けれど、そんなことは百も承知で、これからの私たちはこの夜の誓いを立てた。
 それはこの誓いが、重ねた肌の暖もりの記憶が、互いの鼓動の大きさが、私たちを支えてくれると信じたからだ。
 世界がどれほど深い闇に覆われていようと、どれほど凍てついた冷たい霧に覆われていようと、この誓いがあれば私たちはうまくやってゆける。
 時に道に迷い、時に暗闇の深さに、その重みに耐え切れず、膝を屈することがあっても、この夜の想い出がある限り、私たちは何度でも立ち上がることができる。
 満天の星空の下で、数千光年の闇を貫いて降り注ぐ星々の光の下で誓い合った私たちなら、きっと。
 そう信じて、私たちはその夜を過ごした。
 やがて明けるその夜の終わりを、待ちながら。
 
〈fin〉