araisumisi著『コンバット・パトロール』前後編(サークル:Paper Thin)
アフガニスタンの山岳地帯に派遣された米陸軍パトロール分隊のある日の戦いのお話。
後編では、米軍と敵対するタリバン兵側の視点も加わり、涸れ川(ワジ)を挟んでの銃撃戦が繰り広げられる。
柔らか目のキャラ造形と手堅い装備や戦闘描写が特徴の作品。仕事が早い……とは言いつつ、ぼちぼちアフガン戦やイラク戦の情報も入ってきていますからね。
こうした少し前の少女マンガのような柔らかな表情のキャラ達が、淡々と「仕事」として戦闘をこなす姿は、ああ、まぁ、でも現実はそんな感じなんだろうな、と考えさせられる。
誤解して欲しくないのだが、現場の兵士達がゲーム感覚で戦争している、と言いたいわけではない。ある種の感覚や感情を遮断しないと、こういう極限状況の中では神経が持たない、ということだ。
また表現として本書で特に注目したいのが、戦闘における「間合い」の描写だ。涸れ川(ワジ)と渓谷を挟んで互いに遠く小さなシルエットでしかない敵と、M4とAK47で撃ち合うのだ。
現代の歩兵戦のスピード感と距離感を掴むにはちょうどいい教材になっている。
戦国ものでも三国志でも、現代戦でも、「間合い」の視点から見ると、また違った発見があると思うので、オススメ。
本書は「戦場」を徹底して断片として切り出し、「政治」や「歴史」、あるいは「戦争」の文脈からも切り離すことで、戦場の乾いた状景をうまく描き出している。情念で戦場を描いた松本零士、新谷かおるの『戦場マンガ』とはまた違う、新しい「戦場マンガ」の在り様を模索する試みだと思う。是非、今後の活躍を期待する。