積読日記

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2014年度7月分総評

7月の鑑賞本数は18本。
この月のMVPはフィリピン映画『牢獄処刑人』になります。

牢獄処刑人 [DVD]

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映画『牢獄処刑人』予告編 - YouTube
 
この月はインドの奥様映画『マダム・イン・ニューヨーク』に始まり、インドの暴虐ポリス映画w『ダバング-大胆不敵-』という月でした……が、その合間に『マレフィセント』とか観てますね。
これもディズニーのディズニー女子映画路線で、一見、「今どきのお姫様に王子様なんざいらんのじゃい!」という荒ぶった映画wにも観えなくもなかったんですが、男性嫌悪というより現代女子のロールモデル構築がいまだ固まっておらず、そこまで手が廻ってないだけなんじゃないか、という印象を持ってます。今年(2015年)来る次の『シンデレラ』でその辺りがどう進展するか。
その一方で、ディズニーが男の子をないがしろにしていたわけではなく、挫折せるアスリートの再生の物語としても、山岳火災パニック映画としても非常に高い完成度を見せた『プレーンズ2 ファイアー&レスキュー』なんてものも、ちゃんと公開していたりもします。ただ『アナと雪の女王』と『マレフィセント』の煽りを喰らってか、公開館数が限られてしまったのは残念でした。
この辺の遺恨(私のw)は『ベイマックス』のヒットで晴れるのか。
この他、夏の大作映画の先陣として、『GODZILLA』『思い出のマーニー』の公開が始まっています。
GODZILLA』はホラー&怪獣映画の基本に徹底的に忠実に創られた映画で、外人さんにこれだけリスペクトしてもらえれば本望です。そりゃまぁ、日本人として、核の扱いについては言いたいことはありますけどね。次回作ではラドンキングギドラも出るという話だけど、作中のリアリティラインとかどうなっちゃうんでしょう。
『思い出のマーニー』は優等生的な作りで、いや上品な良作には違いないんだけど、もっとはっちゃけても良かったんじゃないかなぁと感じました。本作を機にジブリが制作を止めるんなら、なおのことね。
 
で、本題のこの月のMVP、フィリピン映画『牢獄処刑人』です。
獄中にありながら「仕事」の時だけ出獄し、「仕事」が終われば刑務所に戻る殺し屋というアイデアがまず秀逸(というか、実話なんだそうだけど(汗)。
日本の司法状況からするとファンタジーにさえなりかねないこの設定も、舞台がフィリピンならさもありなん。
老いた殺し屋とその後継者の若者。腐敗した警察社会をタフに生き残りながら正義の魂をくすぶらせてきたベテラン刑事と、エリート街道を駆け上がる国家警察の若き幹部捜査官。
ふたつの世代間タッグが時に激突し、時に手を組んで、政治と司法の深い闇の奥へと挑んでゆくというポリティカル・ノワールであり、底冷えのする絶望と、煮えたぎる憤怒の物語。
アジアの最貧国と嘲られながらも、着実に人口も経済も大きく成長してきたフィリピンの人々が、自分たちが心から楽しめる娯楽作品を撮ろうとしたら、自分たちの社会の闇から目を逸らさずに立ち向かわねばならなかったという映画なんですよね。
そうなんだよね。
ハードボイルドやノワールの原点とは、本来そこから始まってるんですよ。
むせ返るような熱帯の闇夜から飛び出してきた本作には、改めてそのことを思い知らされました。
そんなわけで、大絶賛の熱帯暗黒(ノワール)映画なるが故に、この月のMVPに選びました。
 
以下はまったくの余談。
本作の監督であるエリック・マッティ氏はフィリピン映画界ではベテランで、日本でも2005年にスパイダーマンパチモノみたいなゆるいヒーロー映画『スパイダー・ボーイ ゴキブリンの逆襲』が公開されています。
……この2本の映画の間に、この監督の身に何があった?(爆