積読日記

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2014年度11月分総評

前月のインド映画ラッシュも乗り切り、この月の鑑賞本数はほっとひと息ついた19本。
この月のMVPは、香港映画版『HEAT』(マイケル・マン監督)ともいうべき壮絶な市街戦描写が見もののアンディ・ラウ主演作『ファイヤー・ストーム』です。

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まずこの月のトップバッターは、今や往年のアクション俳優の接待企画と化した感のある『エクスペンダブルズ3』w(いや、嫌いじゃないです、このノリ(^^;;)。ただ往年のスター俳優の接待だけでなく、若手もちゃんと引き上げるスタローン叔父貴は、本当にハリウッドの良心ですわ。
次いで、当初見送り対象だったのが、意外な掘り出し物だったのがヘラクレスドウェイン・ジョンソン主演のただの筋肉映画かと思いきや、筋肉映画は筋肉映画だったものの、「ヘラクレス」をイメージ戦略と合理的な戦術を駆使する傭兵隊長として設定した、知性派の映画でした。これは宣伝で一切触れられてなかったので、結局、知らないままの人も多いんじゃないかな。
ちょっと変わったところでは、イスラエル拉致監禁コメディ(?)映画『オオカミは嘘をつく』。娘を誘拐殺人された父親が、刑事とともに容疑者を拉致監禁して拷問を加えるもなかなか自白せず、その内、余計な邪魔も入ってきて……というお話。割と洒落にならない拷問描写も挟みつつ、それでも一応コメディというイスラエル風のブラックな笑いが新鮮。ちなみにこの映画の監督さんの次回作はジョニー・トー監督の香港ノワール『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のリメイクだそうなんだけど、どんな作品になるのか予想がつかない(^^;;
それ以外には、アニメ映画を2本。
まず『楽園追放 -Expelled from Paradise-』は、確かに日本のCGアニメの最先端で、凄いは凄いんだけど、2Dアニメとの親和性を高めるという、こっちの方向にこのまま進んでいって本当にいいのかどうか……。お話的にはちょっと理屈が多いかなと感じてたけど、クライマックス以降の衛星軌道上での戦闘から大気圏突破、降下してトラップを多用した市街戦という展開の爽快感が抜群に素晴らしかったのでので、まぁ、いいかと(^^;;
対照的にゆるゆり なちゅやちゅみ!』は、TVシリーズのOVA(を発売前に劇場公開)という扱いだけに、劇的に何か話が動くわけでもなく、いつもの面子が他愛無い会話できゃっきゃうふふする「だけ」というお話。それどころか、むしろTVシリーズよりドタバタ感を抑えにきてて、ドラマ性とか成長とかを徹底的に排除した「優しい世界」なんだけど、1時間ほどの中編とはいえ、よくこれで「作品」としてするものだなぁと、逆に衝撃を受けました。
そうか。ドラマって、必ずしも映画に必要じゃないんだ……(ううむ)。
 
そんなわけで、この11月のMVPは、アンディ・ラウ主演、アラン・ユエン監督の香港映画『ファイヤー・ストーム』(DVDのリリースタイトルは『風暴 ファイヤー・ストーム』)。
市街地で自動火器を多用して犯行を重ねる武装強盗団と、それを追う警察の攻防戦の映画。軍隊レベルの武装と統率、そしてハイテクを駆使して警察を翻弄し、内通者をその幼い家族まで殺戮する凶悪さな犯行グループの造詣がまず強烈で、観てる観客まで一緒に「憎い」と思わせる勢いに、いやぁ、悪役はかくあらねばと感服。
そんな邪悪の塊のような悪に対して、捜査班の指揮を執るアンディ・ラウ兄貴もだんだんと警察官としての一線を越えてゆくという(^^;;
一方、強盗団の一員で、兄貴の幼馴染でもあるラム・カートンは、恋人の妊娠をきっかけに「善人」になろうと強盗団の内通者となるが、既に警官より復讐者と化した兄貴は、強盗団と一緒に幼馴染も葬り去ろうとする……。
この辺の、善悪の境界線が揺らぐノワール感がたまらない。
そして、現代の警察ものでも、ごく当たり前に『攻殻機動隊』ばりのハッキングや電子戦を展開するハイテク感。自動火器にRPGまで持ち出して、じゃんじゃんバリバリぶっ放す手加減なしのフルスロットル感。更に、車とは横っ面から突っ込んで転がすスタイル。……。
今どきのガンアクション映画の最先端の諸要素を、これでもかと突っ込んできた豪華さが、この月のMVPに選ばれた理由です。
特に、先日のデモでも封鎖された香港中央セントラル大通りを舞台としたクライマックスの大規模市街戦は圧巻で、しまいには災害級の都市破壊に雪崩れ込むからね。
 
……いや、まぁ、実はプロットの詰めがちょっと甘いんじゃないのとか、「映画」としては必ずしも瑕疵なしとはしないんだけど(^^;;、あくまで「ガンアクション映画」としては、これからのスタンダードのひとつとなる作品と言っていいでしょう。
ともかく、アクション映画好きなら「教養」として観ておけ、というこの映画なので、この月のMVPとなりました。
 
さて、2014年度も残るは12月を残すのみ。
正月大作も続々公開される中、月間MVPはどの作品でしょうか……。
てな話を、翌年の3月にアップするというのも、まぁ、どうなんだっつー話なんですが(はは)。