積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!ちゃあみんぐ』第8話「はるかと摂」

わがまま☆フェアリー ミルモでポン! 3ねんめ 9 [DVD]

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 『ひぐらしのなく頃に』をやりながら、溜め込んだビデオを消化していた内の1本。
 これまで特にレビューには取り上げてこなかったものの、この春からの新シーズンはちょこちょこと目を通していた。実はこの新シーズンではちょっと興味深い試みを行っていて、今回はそのキーポイントとなるエピソードだったので遅ればせながら取り上げてみよう。
 元々『ミルモでポン!』は、クラスメイトの結木摂に憧れるヒロインの南楓(みなみ かえで)の元に妖精ミルモがやってきて、恋の手助けをするという基本構造に、楓の恋のライバルの日高安純やミルモの仲間の妖精達が絡んでくるというお話。ただ、当初土曜朝の放映だったのがゴールデンタイムに引越し、引越し前を併せると4年目に突入できたのは、安純をはじめとするエキセントリックなキャラによるスラップスティック・ギャグ的な側面と、ちびっちゃい妖精達を通した年少視聴者への間口の広さ故だろう。
 ただ、スラップスティック・ギャグも3年もやっていればあらかたやれる話はやりつくしているわけで、そこで今シーズンでは楓と結木の恋愛関係に焦点を当てて改めてこの『ミルモでポン!』という物語を語りなおそうとしている。
 ところが、そこでオーソドックスな少女マンガのラブコメをやろうとするには、実は既存のエキセントリックなキャラ達が邪魔になってくる。それももっともな話で、例えば楓が結木のそばにいると飛び蹴りかまして飛び込んでくる安純がそのまま「恋のライバル」では、結木の一挙手一動に一喜一憂するような繊細な恋の駆け引きなどのん気にやっていられない。いきおい「戦って勝ち取れ」的な展開にならざる得ず、それではやはり「ラブコメ」ではなく「ギャグ」にしかならない。
 そこで今シーズンのスタッフはどうしたかと言うと、物語の主軸から既存の「恋のライバル」たる安純と、同じく既存の「当て馬」たる楓に惚れている大金持ちの松竹を排除して、代わりにもっと繊細な恋の駆け引きが出来そうな新キャラを据えたのだ。さすがに露骨に新シーズンから画面から消すようなことはなかったが、その代わり安純には妙なプロカメラマンがまとわりついて彼がカメラを向けると思わずポーズを取ってしまい身動きが取れなくなるだとか、松竹の場合、年中、女子生徒の大群に追われて楓の相手をしていられなくなるだとか、画面上には出すもののこれまでの作中の役割を機能できなくしている。
 そして遂に今回のエピソードで、結木の幼馴染で趣味も一緒という恋のライバルとしては最強のカードを持つ女の子・はるかが登場し、キャラの構造的な入れ替えが完了したのである。
 
 いやぁ、思い切ったことをする。
 この措置が視聴率的に成功しているのかどうかは不明だが、長期シリーズものの作品寿命を延命させる手段とし、実に興味深い試みであることは間違いない。
 個々のエピソードのレビューとしては今後も特に取り上げてゆくつもりはないが、この試みの成否については最後まで見届けたいと思う。