積読日記

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菊池良生『傭兵の二千年史』

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

 この間の土曜日にいつもの面子で渋谷に集まり、呑むわ歌うわ、大声でろくでもない議論をするわの一夜を過ごした際、道楽の光師匠に薦められた一冊。
 娼婦に続いて世界で2番目に古い職業とされる傭兵の歴史を、2000年前のギリシャ都市国家群の時代に遡って語る本です。とはいえ、せいぜい230頁くらいの新書なので、肩肘張らずにさらりと読めます。
 先に紹介している『戦争請負会社』が「現代の傭兵」のルポなので、そちらに手を付ける前に歴史的視座(パースペクティブ)を掴んでおきたかったこともあって、こちらから先に読んでいます。その意味で、この本は非常に面白い示唆に富んでいます。
 どこがそうかというと、「傭兵」というのは、まさしく「まろつわぬ兵(つわもの)」であり、洋の東西古今を問わず、その時代の社会システムの衰退の過程で正規軍を補完する形で勃興し、正規軍が消滅(それは国家主権の消滅と同義でもある)し「中世化」する中で繁栄を謳歌し、正規軍の再構築(=社会システムの再構築)とともに衰退してゆくという歴史のパターンを明確に示している点です。こうした視点は現代の現象だけを見ていても見えてこない、通史ならではの視点と言えます。
 してみると、かつてないほどPMFへの依存を深めつつある米軍のイラク統治が、歴史的にどのような位置付けにあるのかが自ずから見えてくる。
 日曜だったかの朝日新聞朝刊の一面に、PMFに参加する日本人兵士の法的位置付けや、日本政府とのPMFとの付き合い方などを内閣官房で研究に着手した旨の記事が掲載されていたけど、その中で自衛隊によるPMFの利用に防衛庁自身は否定的だという話が載っていました。おそらく職業軍人の直感として、危険な匂いを感じ取ったのでしょう。
 しかしまぁ、こうしたことは時代の基本原理が変わろうとしていることに本質的な原因があるわけなので、日本一国が逆らったからといってどうなるものでもないんですけどね。