積読日記

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幸村誠『ヴィンランド・サガ』第1巻

ヴィンランド・サガ(1) (講談社コミックス)

ヴィンランド・サガ(1) (講談社コミックス)

 最初の千年紀の終わり、北欧から地中海まで、海岸沿いに国々を荒らしまわった無敵の民族がいた。「北の民(ノルマンニ)」──後の世に言う「ヴァイキング」。
 そのヴァイキングの一団であるアシュラッド兵団に所属する、アイスランド出身の少年トルフィンの成長譚(ビルディングス・ロマン)。
 
 少年誌の世界に打って出た星雲賞受賞の俊英、幸村誠の最新作。前作『プラネテス』は二ヶ月に1回の掲載で、週刊誌の連載なんて務まるのか心配だったが、なかなかどうして、月1休載くらいで立派に続いてます。*1
 作品そのものの話としては、ここ最近の少年誌ではあまり見られなくなった骨太の歴史大作で、初手から中世の城攻めを血腥く展開してくれる。かなり徹底して行われたであろう取材の成果が垣間見え、西洋中世史や軍事史のその筋の方々にも満足してもらえるだろう。
 その後、3話目でいきなり過去編に突入し、『マガジン』本誌でもまだ過去編のままなのだが、これだけの本格歴史大作にはそのぐらい腰を据えて掛かってくれるくらいがちょうどいい。企画とドラマ性を重視するマガジン編集部の良い面が顕れた作品となりつつある。*2
 ちなみにタイトルでもある「ヴィンランド」とは北米大陸のことで、コロンブスより遥かに先行して、ヴァイキングが行き来していたという歴史的事実にちなむ。作中では「人があらゆる支配から解放される約束の地」として描かれ、その一方で「人間はみんな、何かの奴隷だ」とのアシュラッドの虚無的な呟きとの対比に象徴される相克が本作のテーマとなる。
 それをストレートに台詞で言わせてしまう辺りが作者の若さと言えなくもないけど、まぁ、少年誌の掲載作品だからね。このくらい判りやすい方が、読者には伝わりやすいでしょう。
 まずはこの第1巻、堪能しました。
 続きが楽しみ。

*1:今の『マガジン』ではそのくらいの休載頻度は当たり前となっている。

*2:同時に作家性を蔑ろにしがちという悪い面もあるわけだが、さすがに星雲賞受賞作家相手には多少の遠慮があるらしく、今のところその辺は上手い具合にいっているようだ。