積読日記

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総監督:富野由悠季『機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛-』


映画『機動戦士ZガンダムIII A New Translation 星の鼓動は愛』予告
eiga.com

機動戦士Zガンダム~A New Translation Review~(初回限定盤)

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 20年の歳月を経て甦った『Zガンダム』の完結篇。
 公開初日の夕方の回、300席くらいのスクリーンで九割弱の入り。
 
 TV版では第2部以降、また地上に降りてダカールでシャアが演説したり、キリマンジャロ攻略戦で再会したフォウにまた死なれたりといろいろあったような気がするけど、その辺、きれいさっぱりカットして宇宙篇だけで再構築されているのでだいぶ判りやすくなった――と言っても、思想も哲学もへったくれもない、生き残りと権力掌握だけを目的とした裏切りと合従連合が目まぐるしく繰り返されるだけのストーリーとも言えるので、カツでなくともそうそうついてけませんいわなぁ。
 で、以下はネタバレを含みますのでご注意おば。
 しかし、改めて観直すにつけ、冷戦が完全に終わりきるより前に、その後の国際紛争が近代的な国家システム同士の戦いではなく、中世的な準国家集団による思想なき権力抗争に陥ると予見してのけていたハゲ監督には、つくづく頭が下がる。
 そうしたシビアな世界観であったり、やること為すことすべて空廻りするシャアのヘタレっぷりとか、本来、歴史の分岐点たるべき戦場が登場人物個々人のエゴの衝突で凄まじい勢いで混沌へと陥ってゆくグルーヴ感等、観るべきところはやはり少なくないのだけど……。
 う〜ん、率直な意見としては、ぎりぎり今ひとつ気持ちが乗り切れなかった。
 本当はもうちょっと感情的に「くる」かと思ってたんだけど、微妙に外されてしまった感があるな。
 まぁ、TV版でも、終盤でニュータイプ描写が『幻魔大戦』みたいな超能力戦になってしまったくだりで、引きはしたんだよね。ハードボイルドな現実認知の物語としてやってきて、最後の最後で口喧嘩じみた観念論持ち出されても、みたいな。
 それと、ラストを変えた事自体は、特に良いとも悪いとも言うつもりはないのだけど、TV版ラストのシロッコの「呪い」自体をなかったことにするのではなく、それを跳ね除ける強さをカミーユに示して欲しかったという個人的な願望もあったり。あるいは一度、「向こう側」に行きかけたカミーユを、ファが連れ戻す、とかね。浮ついた観念論をこね廻すより、自分を抱きしめてくれる女の身体のぬくもりの方が、よほど「リアル」で信じるに値するというのがあの新しいラストシーンの意味だろうし、それこそ作中で女達が主張し、彼女達の情念が男達の作り上げた戦場を引っ掻き廻すという本作のテーマとも通づるはずなのだから。
 別な言い方をすれば、確かに要所要所で必要なことはちゃんと語られているのだけど、省略が激しすぎて感情の動線の繋がりが見えづらかったからとも言えるかな。どれもちょっと考えれば判るレベルのものだけど、その「考える」という行為が必要な分、素直な感情移入が阻害されてしまっている。まぁ、いつもの富野アニメといえば、それまでだけど。
 そうした点で、手放しでは褒められない。だけど、この作品が本来なら破綻してもおかしくないほどの膨大な情報量を詰め込みつつ、まがりなりにも映画としての体裁を保つという非常に高度な演出技術に挑戦しているのも事実。このレベルの演出が出来るのは、そもそもこの国では富野由悠季しかいないでしょう。それを久しぶりにスクリーンで堪能できたのだから、悪くはない作品だったと思います。
 次は『リーンの翼』か。さて、どうやって観るかな。
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