笹本祐一『ARIEL番外編(2) 家出艦長の里帰り』
- 作者: 笹本祐一,鈴木雅久
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 2006/02/28
- メディア: 文庫
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ちなみにその『ARIEL』第1話の掲載された朝日ソノラマの『獅子王』をリアルタイムに買って、同じ受験生だったヒロインの絢ちゃんに感情移入してた世代です。
さすがに今、三人娘の話をやられても困りますが。
で、今回はその登場人物、銀河帝国の侵略会社ゲドー社の戦艦オルクスのハウザー艦長が10年ぶりに里帰りして、勢いで婚約する羽目になり、嫁さんの実家の危機を救って、結婚するまでの話。ちなみにこの前の巻で、乗艦はオルクスから新型戦艦に変わっています。
……年貢の納め時、つーか、いろいろ身につまされるものがある話、つーか。
自分も親父の葬式まで、10年くらい実家に寄り付かなかったもんなぁ。
それとあそこまで周囲にお膳立てしてもらえないと、結婚まで踏ん切りがつかなかったハウザーの姿に、無駄に歳だけ喰ってしまったオタク男のダメさ加減に重なるものがあり、それはそれで感慨深かったり。うーむ。
それ以外では電子戦描写の充実はいつものことですが、クライマックスの対「星泥棒」戦での惑星降下作戦での高速戦のグルーヴ感はお見事! テクニカルタームを多用しながら必要以上に説明せず、それでいて「判った気」にさせてアクションシーンのスピード感を維持するという、この作者がデビュー作『妖精作戦』以来、実に四半世紀に渡って培ってきた表現技術のひとつの到達点と言っていいでしょう。
……まぁ、その高度な技術を、一般受けしないこんなニッチなライトノベル市場でしか使わないという点が、また笹本祐一らしいんですけどね。
そんなわけで、ハウザー艦長の話はひとまずここまでなのかな。
何だかいろいろネタ振りはされてたけど、これ以上やると『ARIEL』からどんどん離れていっちゃうし。
個人的には、そろそろ一般受けするお話も書いて欲しいところ。
そりゃあ、別に大石英司みたいにドラマ化狙えとまでいいませんけどね。