積読日記

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『NHK特集 ワーキングプア』

ワーキングプア―日本を蝕む病

ワーキングプア―日本を蝕む病

 一昨年2006年7月に第1弾、その年の年末12月に第2弾、それから1年後の昨年12月には第3弾が放映されたNHK渾身のドキュメンタリーである。
 ちなみに何でこんな話題をこのタイミングでやるかというと、諸々忙しくて今日の分のレビューをまとめ切れなかったので、お蔵出し原稿を引っ張り出してきた、と。
 そういうことなので悪しからず。
 
 率直に言って、多様化の進んだ現代社会で特定の社会的テーマを捉えて番組を創るというのは、非常にリスキーな時代になってきていると思う。例えば、この番組が放映されるまでは、「ワーキングプア」問題についても「日本経済のごく一部の現象で、全体では好景気なんだからいいじゃないか」という意見は根強くあったんですよね。
 しかし、この番組で実際に、一生懸命に働いているのに生活保護以下の収入で苦しんでいる人たちがいるという姿を世間に突きつけたことによって、この問題をこのまま放置していてはいけないという認識が国民の間に芽生えつつあるというのは、この番組の大きな功績だと思う。先の参院選での自民大敗の小さな要因のひとつにもなったのではないか。
 
 ……まぁ、そうは言っても財源の問題はあるし、厚生省なんかは逆に生活保護の水準の方を引き下げようとしているわけなのだけど。
 そんなに自民を政権から追放したいのか、こいつら。
 
 一応、指摘しておくと、番組で取り上げた人々だけが日本中で唯一のワーキングプアであるならこの問題は「可哀相だね」で済むのだけど、こういう生活が「貧困層」として一定のマジョリティを占めてしまうと、経済や治安などにも大きなインパクトを与えてしまう。
 単純に考えても、収入がそれなりにあればきちんと消費活動をして景気を下支えし、また教育さえ受ければ生産性を向上させてくれるはずの人的リソースが、不活性化された状態で放置されているわけなのだから、マクロ経済学的には非常にまずい状態だという認識を為政者ならびに財界人は持つべきだ。
 それに生活ぎりぎりで暮らしているのだから、収入に対して消費に回る比率も高い。貧困層から中産階級層までの社会階層に投資することは、収入は多くてもその多くを投資や貯蓄に廻す高所得層に減税するより、経済波及効果は高いのだ。
 実際問題として、自分なんかこの歳で結婚もせず、子供ももうけず、賃貸アパートにひとり暮らしなんて生活をしていると、家も建てない、マンションも買わない、車も買わない、結婚式も、リゾート旅行も、出産やら子供の教育費も無縁、と、ちょっと前の同世代なら当然していた数百万から数千万単位の支出をほとんどやってないし。密林さんでDVDボックス買ったり、コミケで散財しているくらいじゃ、日本経済への貢献は誤差の範囲でしかあるまい。
 ……いや、まぁ、自分が結婚できないのは、何も収入のせいだけじゃないとは思うが。
 
 それはともかく。
 こういう番組をコンスタントに作成してくれるNHKは心強い。受信料払っている甲斐があったというものだ。
 後は、この手の社会的な課題のときのNHK特集やクローズアップ現代だけでも、WEBでいつでも観れるようにアーカイブ化しておいて欲しいのだが。
 ニコニコやYouTubeに勝手にアップロードされているものでしか補完できないなんて、天下の日本放送協会の名前が泣くってもんですぜ。