積読日記

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伊藤明弘『バトルガール (リュウコミックス)』

バトルガール (リュウコミックス)

バトルガール (リュウコミックス)

 80年代から90年代に掛けてのマニアックな打ち切り作品やら絶版作品やらをサルベージすることに妙な使命感を感じている徳間書店の雑誌『リュウ』編集部が今度見つけてきたのが、16年前の本作品。よく見つけてきたな。最終話だけどこかで読んだ気がするけど。
 内容はVシネ全盛期のどさくさにまぎれて制作されたゾンビ+女コマンドーもので、伊藤明弘が調子に乗ってアクションと薬夾とゾンビを5割増にしたお話。いやぁ、確かにこういうB級作品って、伊藤明弘は好きそうだよね。
 
 とはいえ、何か評論めいたことを書けるほどの意味のある内容はない。
 定番的なベタな設定とベタなプロットで、作中の裏切りも別れも、お約束の域を出ない。いっそすべてが予定調和とさえ言ってもよい素材がこうも揃えられると、さて問われるのはむしろ料理人の素の腕前だ。
 16年前の伊藤明弘の腕前は今見れば多少の野暮ったさは否めないのだが、だが当時を知る者として証言させてもらえるなら、アクションを描かせれば若手最右翼と目された武闘派だった。単位コマ数辺りの薬莢の多さもさることながら、ハリウッド張りにねちっこくアイデアを叩き込んでひとつのアクションシーンをぐいぐいとひっぱる力技は、今日でも業界の第一人者とされる。
 ……いや、まぁ、『ジオブリーダーズ』で数巻に渡ってワンエピソードのドンパチを続けた時は開いた口が塞がらなかったけど(それも年に1巻づつしか刊行されなかった(爆))。
 
 その伊藤明弘の若書きともいえる本作品は、上にも書いたようにあまりさして意味のある内容なぞないのだけど、しかしそれこそB級のB級たる由縁であり、いっそ勲章でさえある。
 それを徹頭徹尾貫いた本作は、若き武闘派漫画家の咆哮のような作品なのだ。
 
 ……ああ、いや、ま、ごちゃごちゃと書きましたけど、基本的に見事なB級アクション漫画なので、あんまり深く考えずにスカッと楽しんでいればよろしいのではないか、と。はい。