積読日記

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口八丁ぐりぐら『花と泳ぐ 1 (まんがタイムコミックス)』『花と泳ぐ 2 (まんがタイムコミックス)』

花と泳ぐ 1 (まんがタイムコミックス)

花と泳ぐ 1 (まんがタイムコミックス)

花と泳ぐ 2 (まんがタイムコミックス)

花と泳ぐ 2 (まんがタイムコミックス)

 霊感体質の青年・幸太の記憶喪失の幽霊・菊子に懐かれて一緒に住むことに。そこへ押しかけてきた霊媒師の少女ふみもなし崩しに馴れ合って隣室に住み込んでしまう。霊感のまったくない幸太の親友・梅ちゃんや菊子が拾ってきた黒猫の会長とともに、にぎやかに季節は巡ってゆくのだが……。
 
 基本的な設定はよくある「ほんわか萌え4コマ」なのだが、時折、不意に差し込まれる「すべてが終わった時点からの視点」のモノローグが読者の不安を掻き立て、「日常」の尊さを際立たせるという構造を持った作品。『NANA』みたいな視点を組み込んだ作品というと例として判りやすいか。
 あるいは宇野常寛の『ゼロ年代の想像力』流に言うなら典型的な「ポスト決断主義」系統の作品ということになるのだけど、まぁ、それはどうでもいい。
「4コマまんが」というフォーマットに、こうしたドラマツルギーを組み込んでもいいのだ、というのは新鮮な驚きだ。
 無論、ここでのドラマツルギーは「4コマまんが」のフォーマットからくる安定感の隙間にそっと差し込まれる程度の淡やかなものだが、しかし作者が狙っているのもそうした空気感にあるのだろう。それはかなりの程度、成功していると言っていい。登場人物たちのたわいのないやり取りに微笑む中、不意に胸を締め付けられるような切ない瞬間が訪れる。つまるところ、それが人生だとでも言うように。
 
 原作の方はクライマックスに向けて物語も佳境のようだが、この「4コマまんが」のフォーマットを維持したままどこまでテンションを上げ、作品を纏め上げるのか。
 非常に興味深い作品であるのは確かだ。