積読日記

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Ark Performance『機動戦士ガンダムギレン暗殺計画 1 (角川コミックス・エース 83-5)』

 宇宙世紀0079末、敗戦間際のジオン公国──
 その首都ズム・シティでは、ギレン派の重鎮が続けざまに暗殺されていた。その捜査を担当する公安捜査官レオポルド・フィーゼラーは、総統府に勤務する幼な馴染みの士官エリースから、真犯人につながる手掛かりの入ったデータチップを入手する。そこに収められていたのは、連続暗殺事件への関与を示唆する証拠資料、犯人グループと繋がる通信プロトコル、そして最後の標的──ギレン・ザビの名前だった。
 さらにレオポルドの元に届けられた、匿名の差出人からの一通の手紙。そこには、一年戦争開戦直前のギレン暗殺未遂事件の担当官で、犯人検挙後、謎の失踪を遂げた捜査官デイビッド・シラーの名前が書かれていた。
 まるで何者かに招き寄せられるように、暗殺事件と国家の暗闇へと踏み込んでゆくレオポルド。一方、犯人側とギレン側の暗闘も、水面下での連邦との和平工作を横目に加熱してゆく。
 はたして、暗殺計画は阻止できるのか?
 そして、ジオン公国の歴史の裏面で暗躍し続けてきた謎の黒幕「レギンレイヴ」の正体とは?
 
ガンダムエース』連載中から楽しみにしてきたジオニック・ハードボイルドがついに単行本化。気分は『SSーGB (1980年) (Hayakawa novels)』か『ファーザーランド (文春文庫)』か。歴戦の傷病将兵達からなる首都防衛大隊が事件に深く絡んでいそうなのは、史実のヒトラー暗殺計画の首謀者のひとりシュタウフェンベルク大佐が東部戦線帰りの戦傷兵であったことをモチーフにしているのかしら。などなど、ジャック・ヒギンズの大戦秘史ものが大好物の自分は、やにさがる頬が止まりませんよ。
 大作冒険小説の序盤がじれったくもったいぶって読者を焦らすように、この第1巻はまだまだネタ振りが中心。思わせぶりな登場人物たちが、ちら見せで登場して先の展開を期待させます。
 展開が遅い? いやいや、これこそが大人の愉しみ。冒険小説は「準備小説」とも言って、話の7割はクライマックスに向けてのネタの仕込みに費やされるものなのですよ。我慢のできないお子様は、『ガンダムSEED』でも観ているがいいのです。
 でも、あれね。僕に言わせれば、この作品はまだ足りないものがあるね。
 そう。憂いを秘めた戦友の未亡人とのロマンスですよ。んで、彼女が暗殺計画の鍵を握っていて、未練たらたらに苦悩する主人公はますます泥沼に……。<それは、ただのお前の趣味だ(爆)。
 ま、それはともかく。
ガンダム』で、大人向けのこれだけしっかり構築された世界観のコンテンツがリリースされるようになったというのは実に喜ばしいことです。
 先を急がず、じっくり大作の風格で語りきっていただきたい作品ですな。