積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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賀東招二『フルメタル・パニック! せまるニック・オブ・タイム―フルメタル・パニック! 10(富士見ファンタジア文庫)』

 あとがきの作者自身の弁によれば、いよいよラス前、風呂敷たたみの巻とのこと。
 その言に違わず、いろいろな謎が解かれ、構造が明らかにされ、ついにレギュラー陣からも戦死者が──
 以下、ネタばれ厳重注意!
 
 警告は既にしてあるので、遠慮なくネタばれをぶっ飛ばさせていただく。
 いやぁ、かなめが涼宮ハルヒでラスボスってのも驚いたけど、ここでクルツ脱落とは。狙撃ネタできっちり見場をさらった死様だったし、この作者の作風なら、都合よく生き返ってくれはしないでしょう。このネタならラストで「だれも死ななかった世界」を選ぶという選択肢もあるけど、総介のあの葛藤のしかたからすると、そんな結末は否定されるだろうし、またそうあって欲しいと思う。
 
 この作品は、さまざまな萌え要素だとか、ギャグとか、ロボットアニメのテイストだとかをまぶした優れたエンターテイメント作品なのだけど、しかし根底に「ハードボイルド」の精神性がずしんと重きを置いていて、全体を引き締めている。
 その「ハードボイルド」の定義については昔々に一度ここでやっているのでそちらをお読みいただくとして、ここでは「死ぬ奴は死ぬし、生き残る奴は生き残る」という突き放した現実認知の精神性であるとご理解いただければ充分だ。説得力のある力強い物語とは、どこまでも冷徹な現実認知の上にしか存在しない。非情なのではない。ただ現実がそうなのだから、真実の希望もまたそこから見つけるしかないではないか。
 そうした部分を含め、この作品は、自分の描きたかった「ライトノベルと冒険小説の融合」を見事に実現した作品であり、率直に言って悔しくもうらやましい。だってこんなに面白いんだもの。あぁ、まったく。面白すぎて頭にくる。
 さて、次巻でいよいよファイナル・エピソードに突入。とても1冊で終わると思えないけど、まぁ、何にしても遠慮なくやっちゃってくれ。
 頼むぜ、大将。