積読日記

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『ギャラクティカ』#101「33分の恐怖/33」

 サイロンの攻撃を避けて、宇宙の逃避行を続ける<ギャラクティカ>と避難船団。だが、ジャンプ後、きっちり33分後に出現してくるサイロン艦隊の追撃に悩まされていた。5日間にも渡る戦闘と逃走の日々に、乗組員たちの疲労は蓄積し、ミスが誘発される。そんな中、1隻の民間旅客船の脱落をきっかけにサイロンの追撃が止まった。ほっとする船団の元へ、脱落した旅客船が戻ってくるのだが……。
 
 こういうトリッキーな話をシーズン本編第1話にもってくるかという驚きとともに、このドラマのトーンを間違いなく視聴者に定義づけるエピソード。
 戦争を語るに当たって、戦闘シーンの爽快感ではなく、機体整備の合間の疲労感に満ちたドラマや、仲間を疑わなくてはならない疑心暗鬼。そして苦渋に満ちた決断と、その果てにあるささやかな希望という表現の積み重ねは、これから語られるシリーズを凝縮した印象を与える。
 そして何より本エピソードの白眉は、クライマックスの疑惑の旅客船をアポロ達が撃沈するくだりである。それは当然、「もう一度、911が起こったら」「ホワイトハウスを目指す、乗客の乗った旅客機を撃墜できるのか?」という問いかけに違いないのだが、この作品が制作されたのが911からほんの数年しか経っていないことを考えると、制作陣の覚悟のほどに慄然とせざる得ない。*1
 無論、そこまでしなければならないほど、米国民の心はあの事件で傷ついたのだとも言えるのだが……。
 
 いずれにせよ、序章に続いて本エピソードが語られることで、このTVシリーズがファンタジックなSFドラマではなく、現実と地続きの非常にアクチュアルな物語であることが、視聴者にも示されたのである。

*1:まぁ、機内に誰も乗っていないことを示唆するカットも挟まれているのだけど、スタッフのコメンタリーを聞く限り「『テレビコードに配慮して、いないことにしてるけど、本当は乗っているのね』と勘のいい視聴者に伝えるためのカット」などとメタ的にもほどがある意図のカットだそうで。