『Phantom〜Requiem for the Phantom〜』全26話
PHANTOM-REQUIEM FOR THE PHANTOM- [DVD]
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/07/24
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Phantom INTEGRATION Nitro The Best! Vol.1
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ファントム ~ PHANTOM OF INFERNO ~ (通常版)
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- 作者: 虚淵玄,リアクション,山田秀樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/05
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米国旅行中の高校生がマフィアに拉致されて暗殺者に仕立て上げられ、全米を揺るがすマフィアの抗争劇に捲き込まれる、というお話。
ニトロプラス10周年を記念して、満を持してのアニメ化作品。
監督は『ノワール』『MADLAX』の真下耕一。脚本は黒田洋介をシリーズ構成に、原作者の虚淵玄、高橋龍也他、スタジオオルフェの若手脚本家たち。
原作のテイストからするともっとリアリティ重視で来るかと思ったのだが、監督がアクションではリアリティよりスタイリッシュさを優先する傾向のある真下監督なので、映画版『マイアミ・バイス』や『ヒート』のようなガチさはあまりない。
たとえば、この10年で米国(あちら)の裏社会では高性能軽量の防弾ジャケットが普及している。それに伴い、マフィアや法執行機関の武装も小口径低初速の拳銃弾を使用した拳銃やSMG(サブマシンガン)から、防弾ジャケット上からでも確実に相手を斃せる自動小銃(ライフル)や小口径高初速弾を使った「PDW(Personal Defence Weapon:個人防衛火器)」へと移行しており、戦闘時の人間の動きも変わりつつあるのだが、その辺に配慮した形跡はない。
つか、まぁ、そっち方面をどんどん追及していけばいくほど、ロマンのない殺伐とした軍事作戦みたいなガンアクションになって、さっぱり「絵」にならなくなってしまうので、本作程度のゆるさでちょうどいいのかもしれない。むしろ映像作家的には、「絵」になろうがなるまいがリアリティ最優先というマイケル・マンの方が「邪道」なのか。
その代わり、各自が野望と生き残りを掛けて騙し合い、裏切りを重ねて、状況が目まぐるしく変わってゆく展開は、「暗黒小説(ノワール)」の王道という感じで良かった。特に葛藤を重ねながらも、主人公がぎりぎりのところで非情(というより外道)な選択を行ってゆくところとか、救われなさが窮まっていて素晴らしい。
こんなものを、日本ではTVアニメでやってしまうのだなぁ……。
終盤の日本編は原作でも蛇足に感じてたのだけど、「暗黒小説(ノワール)の文脈で学園ラブコメを再構築する」仕掛けと考えると、日本の美少女ゲーム文化と「暗黒小説(ノワール)」を接合するために当時の虚淵玄が悪戦苦闘した証のように見えて感慨深い。
ただちょっと気になったのが、いろいろ物議を醸し出したラストについて、ニトロプラスの某名物広報氏がアフレコまで聞いていなかったとWEBラジオ上で告白していた点で、ニトロ側がどこまで作品をグリップできていたのか不安が残る。
ニトロプラスは単なる美少女ゲームメーカーの枠を越えて、TYPE-MOONのように「物語シンクタンク」を志向している会社なのだが、最終的な仕上がりまでコントロールできなければ、今後のコンテンツの展開や寿命に影響を及ぼしかねない。
今期(というか春夏クール)は制作委員会が調子に乗ってファンの怒りを買って売り上げの激減を招き、コンテンツ価値の棄損すら引き起こしかけている『涼宮ハルヒの憂鬱』や、鳴り物入りで始まって監督更迭を起こした『バスカッシュ』など、制作側のガバナンスに問題がありそうな作品が見受けられただけに、その点でも興味深かった。