積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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2014年度6月分総評

6月の鑑賞本数は23本。
この月のMVPは『青天の霹靂』になります。


「青天の霹靂」予告 - YouTube
 
この月はMVP以外では、矢口史靖監督の林業青春ストーリー『WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常』、小池健監督でスタイリッシュでハードボイルドな「俺たちは、こんなルパンが観たかった!」を実現させた『LUPIN THE III rd 次元大介の墓標』。
日本でもファンクでアッパーな底冷えのするノワールが撮れることを証明した中島哲也監督の『渇き。』、苦みとダイナミズムに満ちた韓国宮廷史劇の魅力を示した韓国映画『観相師』。
またドキュメンタリー2作、VHSビデオの歴史を振り返る『VHSテープを巻き戻せ!』と、奇才にして鬼才ホドロフスキー監督の未完の超大作が映画史に遺した爪痕を明らかにする『ホドロフスキーのDUNE』 も忘れてはいけません。
その他、『ゴジラ』とか『第三の男』の名作リバイバルにも、いろいろ感じるところはあったんですが……。
 
この月のMVPとなったのは、劇団ひとりの監督デビュー作『青天の霹靂』。
デビュー作で、何、この完成度?
何というか、よくできた落語の小噺のように、無駄がなくきれいに完成された構成にまず驚愕ですよ。
お話はタイムスリップ人情噺で、その手の話はさんざんあちこちでやりつくされてるので、自分は基本あまり評価する気になれないんですが、冒頭からの登場人物への感情移入がうまくてぐっとお話に引き寄せられちゃう。
後は定番の話を定番に転がしてるだけなのに、画面設計や間の取り方、伏線やネタの振り方が上手、かつ上品で、最後まで緊張感を失わない。
いやぁ、定番の話を定番通りやってつまんないのは話が悪いんじゃなくて、語り手の技量の問題だと、これ一作ではっきりさせてしまったという点で、凡百の作家・演出家には酷な作品ですよ。
落ちも過剰に余韻を引っ張らずに、すぱんと終わる。尺も不必要に長くないし、実に小気味よい映画でした。
新旧作入り乱れて観た中で、「完成度」という意味で本作は群を抜いていたので、これはMVPに選ばざる得ない、と。