積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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2014年度8月分総評

8月の鑑賞本数は17本。
この月のMVPはインド映画『バルフィ!人生に唄えば』になります。
『バルフィ!人生に唄えば』公式サイト

 
夏休み本番のこの月は、大作映画が続々公開!
るろうに剣心 京都大火編』から『トランスフォーマー ロストエイジ』、『TOKYO TRIBE』、実写版『ルパン三世』まで……。
ごめん。このラインナップだと、なんだか切ない落ちになっちゃうね。<切ない言うな。 
 
改めて個別作品に触れていきましょう。
るろうに剣心 京都大火編』は邦画チャンバラ映画復活の狼煙を上げんとする意欲作。翌月の後編と併せて、あの超高速剣戟シーンならば世界と戦える! ……まぁ、何で大ヒット映画の第2弾という、予算も時間も潤沢であろう企画で(実は時間はあんまり貰えなかったらしいが)、それだけで勝負する一点突破型の映画になってしまうのか疑問なんですが。特に後編に至っては──その辺の話はまた来月分で。
トランスフォーマー ロストエイジ』は、相変わらずSFXは凄いんだけど、2本分の映画のプロットを無理くり合体させたみたいで、なんだかなーと。あと、画面の情報量が多すぎて、観辛かった。これも今回に始まった話じゃないけど。
世界初(?)ラップ・ミュージカル映画『TOKYO TRIBE』は、結局、園子温監督のいつものやりたい放題だったんですがw、ヒロイン清野菜名の新人離れしたアクションの切れが素晴らしかった。あと、見事な脱ぎっぷりも……ゲフンゲフン。
実写版『ルパン三世』は……ええと、マニア層が罵倒するほど悪い映画じゃないですよ。たぶん小学生男子だったら「超カッケー!」と盛り上がれるでしょう。つくづく自分が小学生男子でなかったことが悔やまれます。あとアニメ版を先に知ってたのも残念でした。ええ、本当に。(いろいろ遠回しな表現)
 
その他の映画としては、艦隊vs海洋怪獣戦まである夏休み向きの海洋武侠映画『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』。スタローン製作、ジェイソン・ステイサム主演で田舎怖い映画……だと思ったら、やっぱりステイサム兄貴の方が怖かったw『バトルフロント』。インドの都市生活者の孤独と出会いの奇跡を上品に描いた『めぐり逢わせのお弁当』。リュック・ベッソンが日本の観念SFアニメを観すぎた結果じゃないかと疑われるスカーレット・ヨハンソン主演の『LUCY』。
 
などなどあったんですが、この後触れるMVP以外にもう1作、インド映画『バードシャー テルグの皇帝』。これだけは触れておきたい。
ええとですね、この映画はまずテロリストへの復讐を誓った潜入捜査官が、暗黒街に身を投じ、のし上がってゆく物語なわけです。まあ、俺TUEEEE!的なダイナミック(いい言葉だ)なアクションが多めで、ちょっとファンタジー入ってるかな、とか思いながら観てたわけです。
が、それが凄い勢いでローマを舞台としたヒロインとのロマンス話になってゆき、カップルになって、インドに戻ってヒロインが許嫁と結婚するので結婚式を邪魔してやるのだという話に雪崩れ込んでゆくわけですよ。
……あれ? 国際謀略アクション映画を観ていたはずでは?
で、結局、全体のボリュームでいうと、その結婚式にヒロインの親族一同が集まってドタバタを繰り広げるというパートが一番長くて、ラストは結婚式でヒロインと主人公が結ばれてめでたしめでたし、と。……。
香港映画なら『インファナル・アフェア』、韓国映画なら『新しき世界』になる定番の潜入捜査官ものが、インド映画では結婚式エンド映画になるのか!?(衝撃)
これ、「結婚エンド」ではなく、「結婚エンド」ってのがミソね。
インド映画を数観てゆくとこういう作品が多いことに気付くんですが、これはインド映画だけではなく、日本でも60年代の『ニッポン無責任時代』なんかもそうでした。要するに映画が家族総出で観にゆく娯楽なので、結婚式にまつわる「あるあるネタ」を満載して、ファミリーの誰もが感情移入できるようにしているんでしょう。今のインドの家族観とか消費スタイルを象徴している物語形式と言えるでしょう。
しかし、国際謀略アクション映画から、凄え力技でそこへ繋げるのな。この映画の成立過程とか、企画会議の経緯とか知りたい。凄く知りたい。どんな迷走すれば、こんな映画になるんだ。
そんなわけで、衝撃的な映画でしたので言及せざるえませんでした。
……いや、さすがにMVPにする気にはなれなかったけどw
 
それで満を持してのMVPもインド映画『バルフィ!人生に唄えば』。
冒頭いきなり「楽しい映画の時間だよ~♪」というご陽気な歌から始まって、インドの美しい古都ダージリンを舞台とする、いたずら者で陽気なろうあ者の青年と高学歴の美しいお嬢様(メガネっ娘。後に人妻)との恋を描く前半、そしてその恋に破れた青年が幼馴染で無垢な自閉症の少女(超キュート。でも元ミス・ワールドで主演作多数の美人女優さん)と愛を育む後半を描いた物語で、時にユーモラスに、時に切なく残酷に、しかしてラストは絶望のどん底からの怒涛の大逆転でハッピーエンドに雪崩れ込むという痛快にして感動のロマンス映画です。
いや、「感動」とは評しましたが、決して押し付けがましくはなく、主人公やヒロインの障害も、それを持って悲劇として描いていません。障害ゆえの悲しい出来事も、哀しいけれどちょっと笑ってしまうような、そんな描き方で語られます。それはあたかも、多くの人々の人生がそうであるように。
ポップでカラフルな色使いの画面の上を、口がきけない代わりに抜群の身体性で、主人公がのびのびと活躍する様は、100年の歴史を持つインド映画界からサイレント時代の名画への深いリスペクトすら感じられます。
いや、本当、この映画や『るろうに剣心』など、この年に観た映画は、役者の身体性こそ映画の華(はな)であることを思い知らされる映画が多かったですね。
ともあれ、最高に素敵で、最高にキュートでポップで、喜劇で悲劇でやっぱり純愛ロマンスでハッピーな超傑作映画でした。
まだ2015年1月時点でDVD&BD化の予定は立ってませんが、お近く公開の折は、絶対観るべし!
いいかい、映画おじさんとの約束だぞ。
 
なんか、2本分のMVPの紹介記事を書いたみたいでボリュームが増えてしまいました。
翌月9月分はもっと短めに……あう。韓国映画が豊作だった月じゃん(爆
短く……できるかなぁ。