『大番 完結篇』@ラピュタ阿佐ヶ谷(19/09/15(sun)鑑賞)

北上次郎選「昭和エンターテインメント叢書」(2)大番 上 (小学館文庫)
- 作者: 獅子文六
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/04/06
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北上次郎選「昭和エンターテインメント叢書」(2)大番 下 (小学館文庫)
- 作者: 獅子文六
- 出版社/メーカー: 小学館
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本日の映画1本目『大番 完結篇』@ラピュタ阿佐ヶ谷に劇場入りしました。1958年公開。戦後、昭和24年の東京証券取引所再開とともに兜町に帰ってきた主人公が、株式市場で大暴れ。時期的に証券取引法改正に伴い、戦前型の相場師の終焉という話でもあるはずだけど、そこまでやるかな。#fr19_n pic.twitter.com/S8aoSbnkHB
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』観終わりました。前回、真珠湾攻撃から始まる戦争相場で失敗して、再び実家の宇和島に引き篭もった主人公。いきなり戦後編。しれっと兜町に舞い戻って喫茶店の2階で小さな証券会社を始める。戦後日本の復興に伴って、会社の規模は大きくなるが……というお話。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:戦中の苦労話を見事にすっ飛ばして戦後編。…東京に残った内縁の奥さんのおまきさん(淡島千景)とか、出征した親友の新どん(仲代達也)とかいるんだけど、ふたりとも無事生き残り、別に苦労話とかするわけでもないし、お得意さんの顔触れも変わらないので、意識は戦前と地続き。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:金持って疎開とかしてた富裕層の戦争観てこんなものだったのかな。これが子どもだと、田舎で苛められた的な話もあるんだろうけど。そんな感じなんで、一切反省とか屈託はなく、朝鮮戦争勃発で相場が沸騰する予感に「稼ぎどきだだ!」と奮い立つのである。うーむ(^^;; #fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:とは言え、時代は民主化の時代で、証券市場も市民解放の時代。相場で儲けた金で大きくした主人公の証券会社も、順調に成長する過程で、自社投資の相場参加より、市民投資家を数集めて口座手数料を稼ぐスタイルに移行する。そうなると、主人公はやることなくなるんだよね。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:そうなると社有車のリンカーンで愛人宅を廻ったり、秘書に手を出そうと熱海のホテルに連れ込んだら内縁の奥さん呼ばれて上手くこと逃げられたり。あと会社の新年会に愛人全員呼んで、大乱闘のど修羅場にしてたりもしたな(爆 何がやりたかったんだこいつ……(-o-;; #fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:そんなわけで、主人公はとんとん拍子で成功してくんだけど、成功すればするほど、相場師としての役割を社会から求められなくなって、女遊びやゴルフぐらいしかやることがなくなってしまっている、とも言える。楽しそうだけど、ある種の地獄のように見えなくもないな……。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:結局、初恋の人で、戦後もストーカーばりに付き纏って何かと(主に経済的に)支援していた旧華族の未亡人との縁談が成立間際に当人が病死し(しかも結局、嫌われてたんじゃないかという話が観客には示される(吐血))、主人公の女性遍歴は(作中では)終止符を打つ。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2019年9月22日
『大番 完結篇』:その後、戦前の伝説の相場師で落ちぶれた後も主人公の人生の転機にはアドバイスをくれたチャップリンさん(東野英治郎。いや、見た目が似てるからそう呼ばれてる(^^;;)の死の報に触れ、再び自ら東京証券取引所の場立ちに立つ……てとこで映画は終わるわけです。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:ちなみにこのラストは原作の新聞連載版に準じてて、単行本版では場立ちの興奮の絶頂でひっくり返って意識を失って終わる、「真っ白に燃え尽きた」落ちなんだそうです。まあ作中で散々不摂生してたから、脳卒中かな。<おい。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:作中の主人公の生死はともかく、相場師としての人生はここで終わるということでしょう。故にここから先の物語は語られない。規格外のモンスターがモンスターであれた神話の時代は終わりを告げ、有象無象の市民株主による人間の時代がはじまる、と。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:「神話」として、とてもよく出来ていることは認めるとして、やはりこの時代の映画として引っかかるのが、「戦争」の希薄さですよね。しかしこの物語が大衆娯楽として時代に受け入れられていたのも事実。でもこれを21世紀の今の日本と重ねた時、色々思うところはあります。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:この主人公は守銭奴だが、悪い奴ではない。自分の肉眼で見える範囲の人々に対しては。関係を持った人々に金銭で報いることにまったく躊躇はない。闇屋時代に警察に捕まった取引業者を、元締めの代議士が冷たく見捨てることに、本気で憤る。しかし、そこまでなんだよね。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:彼のその視界の及ばぬ先で、彼が投じた資金がどう使われ、どういう結果をもたらしたかを、ついぞ意識することはない。屈託なく、無邪気に株価が上がった下がったと騒いでいる。ついぞ体系(エコシステム)としての「経済」を理解できないまま、物語は終わるわけです。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:何の道であれ、頂点を窮(きわ)めるまで突き詰めれば、世界の在り様を掴む哲学の域に辿りつけるのではないか、という教養主義的人格修練論をものの見事に裏切り、凡俗の窮みで終わる。…それもまた人間の在り様か。そういう人もいるし、世間はむしろそれが大多数かもしれない。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日
『大番 完結篇』:戦前戦後を跨ぐ4部作を通して凡俗が凡俗たるを貫き、一個のモンスターとして暴れ倒した男の生きざまを描ききった映画として、これはこれで見事な一代記でした。彼よりは知恵のついていないといけない後世の我々は、もう少しましな経済観を身につけないといけないですけどね。#fr19_n
— 義忠@C98月曜 南ウ40「物語工房」 (@yoshitada_n) 2020年11月7日