『サウルの息子』@新宿シネマカリテ(16/2/10(wed)鑑賞)
【映画パンフレット】 サウルの息子 監督 ネメシュ・ラースロー キャスト ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン 第68回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞
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本日の映画『サウルの息子』@新宿シネマカリテに劇場入りしました。ホロコーストを描いた地獄映画(-。-;; 難民問題に揺れる欧州では、まったく洒落になってなく「今」の問題なのよね……。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』観終わりました。世界全体が狂気に覆われたその底の底で、ひとりの男の狂える妄執を誰が嗤えよう…。いや、目の前で現在進行形の虐殺が行われている横で、「息子」の葬儀のための僧侶(ラビ)を探し廻るユーモアを突き抜けた構造的狂気に震える映画っつーか(-。-; #fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:ドイツ第三帝国絶滅収容所。そこで殺害された大量のユダヤ人の遺体を処理するユダヤ人作業者のことを、ゾンダーコマンドと呼ぶ。同胞虐殺に加担するかのような作業に従事する彼らだったが、数ヶ月後には彼らもまた処分される。そして、それを彼ら自身も知っている。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:そのゾンダーコマンドのサウルは、ある日、「処理後」のガス室の清掃時に、生き延びた少年を見つける。少年はすぐに医師によって「処置」されるが、サウルはその少年を「息子だ」と言って、遺体の引き取りを医師に求める。正しいユダヤの手順で埋葬するのだ、と。#fr16_n
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『サウルの息子』:周り中に死が蔓延する絶滅収容所で、たったひとりの少年の死に拘って、葬儀を司るラビ(僧侶)を探して徘徊するサウル。一方、いずれ殺されると判っているゾンダーコマンドたちの間で、叛乱の準備が密かに進められていた。#fr16_n
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『サウルの息子』:更にソ連軍の侵攻により、他の収容所に行く予定だったユダヤ人たちがこの収容所に廻され、収容所の「処理」能力を越えようとしていた。高まる収容所内の緊張のが一線を越えようとするのを横目に、サウルはひたすら少年の葬儀のために奔走し続ける……というお話。#fr16_n
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『サウルの息子』:いや、もう地獄絵図というか、画面の端々に死がまとわりつき、「部品」と称する屍体が映り込む。でもカメラは常に主人公を中心に据えて、背後の「死」にフォーカスしない。まともな神経なら発狂不可避の環境に適応するために、認知にフィルターをかけているのだ。#fr16_n
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『サウルの息子』:その歪んだ視界の世界の中で、客観的には意味のない……というか、むしろ巻き添えで犠牲者を出したり、叛乱計画を危機に陥れたりしてるんで、はっきり周りに迷惑を撒き散らしながら、サウルは「息子の葬儀」に邁進する。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:だいたい、その「息子」が実在したのかすら怪しくて、周囲の誰も彼に息子がいたことを知らない。むしろ「いない」と断言する者すらいるのだけど、観客には確かめる術はない。まぁ、少年の姿を見た瞬間に、ぷっつりと何かが壊れてしまった、ということなのだろうけど。#fr16_n
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『サウルの息子』:お話の構造としては、サウルというひとりの狂人が「息子の葬儀」という妄執にひた走るミクロな物語を主軸に、ホロコーストというマクロな狂気の物語をオフビートに語るという構造になってます。狂人の視野狭窄を理由に、適度に情報量を操作しながら。#fr16_n
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『サウルの息子』:だから、スクリーン上の絵面は、そんなにエグくはないです。ちらちらと映る描写の「意味」を理解した瞬間に、頭をぶん殴られるような衝撃を受けることになりますが。まぁ、その「意味」が理解できる教養がないと、何のこっちゃか判らず済むでしょうが。#fr16_n
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『サウルの息子』:残虐とも凄惨とも述べることすらおぞましいこうした出来事が、現実にあったと考えるだけで、胸が塞がれるのだけど、それを表層的な残酷描写で観客の生理的な拒絶を招いて届けられないのでは、元も子もない。非常に巧みでクレバーな戦略です。#fr16_n
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『サウルの息子』:ホロコーストがとても非道で残酷な政策であったことは、この映画を観るまでもなく周知の事実だと思うけど、それを支持した人びとでさえ、その現場でここまで人間の尊厳を踏みにじる行為が行われるとは想像もしていなかったと思う。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:東部戦線で地元住民の絶滅政策を実施している現場を視察した際に、あまりの凄惨さに卒倒してその場から逃げ出したのは、ヒムラーだったかゲッペルスだったか。末端のナチス支持の市民には、たわいもない不満の捌け口としてのヘイトだったのだろう。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:けれど、それが政治という回路に流し込まれれば、最終的にこういう形に結実するのだ。しかし、個々の市民はそこまでの悪意を示したつもりはないから、犠牲者からの責任を問う声を疎ましく思い、史実から目を背ける。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:これだけの悲劇を引き起こし、その歴史と厳しく向き合ってきたと伝え聞いてきた欧州の人びとは、しかし今また難民問題で必ずしも理性的でない対応に走ろうとしているようにも見える。それだけ、政治が感情を統御することは難しい。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016
『サウルの息子』:まぁ、私たちだって、他人様の国の政治をどうこう言えるほど偉そうな社会を営めているわけでもないけど。いずれにせよ、かつて現実にあった悲劇、そして今現在も似たようなことが、世界のどこかで行われているであろう悲劇の物語でした。#fr16_n
— 義忠@冬コミ申込中「物語工房」 (@yoshitada_n) February 10, 2016