次回作構想中
年頭のエントリにも書きましたが、今年はオリジナルの小説2作品を仕上げるつもりで、当面は夏コミ発表の某アンソロジーに掲載予定の作品を先に書く予定です。「長さはどれだけ長くてもいいよ」という編集サイドからの思し召しなので、原稿用紙200〜300枚ほどの長編作品となりそうです。
いや、本当は昨年の冬コミで出す本に掲載される予定だったのを、諸事情で一回ぶっち切って、「やれやれ、もう書かなくてもいいや」と安堵してたら、「そんなわけいくかい」と首を締めあげられて、本自体の発行を夏コミまで延期されてしまったというね……orz。
まぁ、面白そうなネタを思いついてしまったので、それをやるか、ということで、改めてお話をお受けしました。
で、スケジュール的には2/14までに登場人物や世界観をまとめたコンセプト・ノートをまとめて提出、GWにお休みを10日以上いただけるとのことなので、そこで一気に初稿を上げてしまって、締め切りまでちょこちょこ直しを行うという予定。
そんなわけで、今はその作品の取材やアイデアのスケッチなどを書きとめてます。
現代とごくごく近い近未来の東京を舞台としたポリスアクションのつもりなんですが、やはりリアルに設定を詰めてくと派手なガンアクションと言うのはなかなかに難しい。だって、現実の東京で銃撃戦なんかなかなか起きてませんしね。やり過ぎると自衛隊の話になっちゃうし。
その辺をどう大嘘ぶっこいて、なおかつそこそこのアクチュアリティを維持しつつポリスアクションとして納めるかが思案のしどころ。
一応、作品の根幹となるSF一歩手前の大ネタは思いついてるし、小ネタのガジェットもガシガシ面白い品々を出してゆくつもり。
後はプロットがさっぱりまとまってないことだよなぁ……。<おい。
義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第7回
0-7
その日の内に〈帝国〉側、〈王国〉側の関係各方面に、フェリアとカオの婚約成立の知らせが通達された。
ただし、フェリアが自分がまだ学生の身であり、勉学の妨げになると強硬に主張したことによって、マスコミには伏せられたままだ。この辺、〈王国〉側で不本意に思ってそうな勢力も一部にあるようだったが、〈帝国〉側があっさりとフェリアの要望を呑んだことによって、不平や不満の声は立ち消えになった。
〈帝国〉側としては、国内世論を喚起できる大きなカードなだけに、慌てて今すぐ切るのはもったいないと考えたのではないか──というのが、カオによる見立てである。
それが正しければ、たとえ在学中であっても、〈帝国〉側当局の意向次第でいきなり結婚まで追い込まれる危険もある。だが、その時はその時だとフェリアは肚を括っていた。どうせ時間稼ぎにしかならないことは、百も承知の策なのだ。
それに稼いだこの時間の間に、何か状況が変わるかもしれない。
今度の「婚約」が、周囲の状況によって追い込まれたものなら、その状況が変わってすべてを御破算(ごわさん)にしてひっくり返すチャンスだってやってこないとは限らない。戦争だって終わるかもしれないし、そうなれば〈王国〉が〈帝国〉のご機嫌をここまで神経質に伺わねばならないこともなくなるだろう。…………。
まぁ、どれも非常に消極的で、楽観的な観測に過ぎないのが、やはり難ではあるのだけど。
そんなことを考えながら、フェリアはほぼ連日、カオのいる法学部第5研究室に出入りするようになっていた。
一応、「婚約者」なのだから、それらしい振る舞いをしなくてはまずいか、と思ったのが理由のひとつ。
それに本校舎から離れた場所にある第5研究室は、周囲も静かなので集中して勉強するのにもってこいだったのが理由のふたつ目。
それと、あえて追加するなら、男やもめが何年も住みついて荒れ果てた第5研究室はつくづく掃除のしがいがあり、いくら通っても終わりが見えそうにないというのも大きな理由として挙げられた。
「姫様みずから、掃除されてるのですか?」
「何よ、本当に汚いんだから、しょうがないじゃない」
「じゃあ、そういうことにしておきます」
フェリアの第5研究室通いの話を聞いたテレサは、そういって何かを見透かすような笑みを浮かべた。
絶対に何か勘違いしていると思う。ミリアも一緒に付き合わせているので、別に妙な勘繰りを入れられる筋合いはない。
大体、家主のカオは年の半分はフィールドワークで戻ってこないので、その間は空き家の管理人をしているようなものなのだ。
だから、テレサが期待するような話はないのだ。
たぶん、きっと。
義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第8回
0-8
「……何をやってるの、テレサ?」
「何って、お茶を淹れております」
「そうじゃなくて」フェリアは小さく唸りながら、教科書を詰めたバッグをテーブルの上に置いた。
「何で研究室(ここ)にいるのか、って訊いてるの」
その日、授業を終えていつものように研究室に足を向けたフェリアは、まるで待ち構えたかのように、テラスのテーブルにティーカップを並べ、お茶を注いでいるテレサと出喰わした。しかも、ペントハウス内と同じ紺の侍女姿で、あまりに堂々としているものだから、一瞬、間違えてホテルに帰ってきてしまったのかと錯覚しかけた。
と言うか、もしかして、その格好のままここまで来たのか……?
様々な疑念渦捲くフェリアの表情を鮮やかに無視して、テレサは逆に訊ねた。
「今日はミリア嬢はご一緒じゃないんですか?」
「ミリアなら、何でも外交史の課外ゼミに素敵な殿方が出席されるので、絶対に出ないわけにはいかないんですって」
「あらあら」
「前から思ってたけど、あの娘、自分の役目判ってないんじゃないかしら」
「きっと、姫様とカオ殿下の仲の良さにあてられたのでしょう」
「テレサ、あのね──」
「早くお掛けください。お茶が冷めてしまいます」
「………………」
溜息ひとつ吐(つ)き、椅子に腰掛けるとテーブルに置かれたカップを手に取る。