積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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小説新連載

 こんなもの見つけまして。
 

日本人男性は優しいですよ。
単に外見に問題があるだけ。
 
■ねっとさまりー: 容姿弱者と禅問答
http://netsummary.seesaa.net/article/105846721.html

 ……ええそうですか、そうですか。すみませんね、本当。
 日本人男性を代表して、お詫びでもすればいいんですか。*1
 
 ただあえて言うと、当事者のニッポン男子諸君もまたお嬢さんと同じ認識を持ってしまっているから、「禅問答」に陥ってるんじゃないスか、と言って見るテスト。
 
 ま、それはそれとして。
 今日はお約束の連載小説『棺のクロエ』の連載第1回目です。

*1:追記:他のエントリを見ると、どうもブログ全体が釣りっぽいんですけどね。「北欧の王室から日本に亡命してきた『しゅごキャラ』のあむ似の美少女で、現在、日本でニートしてる」って、釣り確定だろそれ。むしろ非モテ男子の自虐系ブログなのではとすら疑ってますけど。

義忠『棺のクロエ』第1回:まえがき

 はい、そんなわけで、夏コミ初出しのこの夏の新刊『棺のクロエ』の連載開始です。
 あらすじは一応、こちらをご参照ください。
 
 自分は普段は非常に遅筆で数年単位、ひどいのになると十数年ほったらかしにしている作品もあったりするんですが、今回のお話は実質5日で書き上げた作品です。いや、びっくりした。
 で、それはそれで理由はあって、少年マンガの連載第1回目的な、あえて非常にテンプレートなお話にしたこと、それに伴っていつもより「現実感(アクチュアリティ)」のラインを下げたことなどが理由にあると考えています。
 まぁ、創作者としてもっとトンガッタものも書いてゆきたいとは思ってますけど、短時間で手早くまとめるスキルも重要な技術ですからね。
 
 ま、その辺は読者さんには関係のないお話。
 お気楽に楽しんでいただければ幸いです。

義忠『棺のクロエ』第1回

 
 砂漠を越えて吹き渡る風は、肌を灼く熱を孕んでいた。
 日差しは生きとし生ける者への憎悪を剥き出しにし、少年の小柄な身体をあぶる。
 小柄──と一言で片づけたが、身の丈で言えばむしろ子供並み。そのくせ、肩幅だけは妙にがっしりとしているのは、服の下に防具(プロテクタ)でも着込んでいるのか。
 頭にはその短躯と不似合いなほど大きなつば広の日よけ帽をかぶり、身には長くて白いぼろぼろのコート。それで隠せない肌の露出部分には紫外線除けか、白い細布でぐるぐる捲きにしている。その姿は、南方の大陸に伝わるという屍者の埋葬方を思わせなくもない。
「…………」
 もはや言葉すら発する余裕もないのか、少年は無言で身体を前方へと押し込むように一歩づつ歩む。
 だが、その背には少年の身の丈より大きな白い棺(ひつぎ)が背負われ、その身を押しつぶさんとするかのようにのしかかっていた。少年も時折、身体をゆすって背中にかかる荷重を調整しているようだが、だからといって投げ出す気もないようだった。
 少年と棺(ひつぎ)の進む道路は、広い道幅のまっすぐに伸びる道で、車線の多さからするとかつては幹線道路として使用されていたと思われた。だが、もう何年も手入れがされていないのか、道のそこかしこで路面を割って草が生え、道の窪みには砂が吹き溜まっている。
 道路わきには時折、真っ黒に焼け焦げた戦車やトラックの残骸が転がっていた。中には高熱でねじ曲がった砲身を、それでも天に向けて突き出して擱座(かくざ)する対空戦闘車輛まであった。
 だが、そうした苛烈な戦(いくさ)の痕跡に目をやることもなく、少年は歩き続ける。
 しかしその内、その足がもつれ始めた。はじめはわずかに歩幅が乱れるくらいだったのが、明らかにバランスを崩し、背中の棺(ひつぎ)が大きく揺れ始める。
「くそっ……っ!」
 唸るように罵(ののし)る少年だったが、洩れる息の荒さは隠しようもなかった。
 やがて路面の割れ目につまずき、そのまま支えきれずにその場に膝をつく。
「…………っ!」
 あえぐように大きく息をつくが、肺に流れ込むのは炎とまがえるほどの熱量を孕んだ大気だけ。
 そのまま背中の棺(ひつぎ)に圧し潰されるように、路上に倒れこむ。
 棺(ひつぎ)の下から小さなうめきが微かに洩れたが、すぐに途絶えた。もがく様子もなく、ほどなく少年の身体は動きを止める。
 そして古戦場でもある打ち捨てられた街道は、吹きすさぶ熱風の奏でる風音だけの支配する世界に戻った。

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