積読日記

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『CONTINUE SPECIAL 特集 ハチミツとクローバー』

CONTINUE SPECIAL 特集 ハチミツとクローバー

CONTINUE SPECIAL 特集 ハチミツとクローバー

総評

 『ハチクロ』アニメ化に伴って、原作者の羽海野チカへのロングインタビューに、はぐ役の工藤晴香のグラビアインタビューを始めとするアニメ関係スタッフへのインタビュー等々に、用語大辞典、ジブリの小冊子に掲載された羽海野チカの幻のエッセイコミック『イノセンスを待ちながら』をブリッジに、押井守の『イノセント』アフターレポートへと繋がる流れ。
 ちょっときれいに繋がりすぎている感もあるが、『イノセンスを待ちながら』では『パト2』の南雲警部と『攻殻』のバトーをその不器用さゆえに慈しむ辺り、いかにも羽海野チカらしい視点のエッセイだった。
 『ハチクロ』については、アニメとこの手の周辺商品から気分を盛り上げていって、アニメ放映終了後に一気に単行本に取り掛かるという私の遠大な野望(笑)にぴったりな誌面である。
 
 その他、庵野秀明を例のランドウォーカーに乗せてみたり、この夏にドラマ化される『アストロ球団』の特報画像、『エウレカセブン』の元ネタ探しなど、アニメ、コミック、映像系の記事をややサブカル的な(もしくはこ洒落た)視点からまとめた一冊となっている。
 もっとも、『CONTINUE』本誌はゲーム誌なんだよね。この特集誌にはゲーム関連の記事はほとんど載ってないけど。
 20年前であれば、この手の特集企画は『OUT』か『アニメック』辺りのアニメ誌周辺からスピンナウトする形で出てきたものだが、今はゲーム誌周辺からというあたりに、今の時代の雑誌業界のパワーバランスが垣間見えるような気がする。

羽海野チカ ロングインタビュー」

ハチミツとクローバーOfficial fan book vol.0 (クイーンズコミックス)
 インタビュアーに吉田豪、ゲストに『CUTiE comic』掲載時に担当だった小山繭子を迎えたロングインタビュー。イラストを含めて全12頁。
 ……しかし、何というか、はぐのコミュニケーション不全っぷりは、羽海野チカ本人からきてたのね。コミケ参加後、本は売れたのに友達が出来なかったと地下鉄の構内でさめざめと泣いてたら、閉じ込められて警備員さんに出してもらったくだりには、もう全米が貰い泣きですよ。
 ただ彼女に限らず、素晴らしい作品を次々と産み出しながら、それが自己評価に直結しない作家さんというのは、決して少なくないんだよね。羽海野チカの場合は幸運にして小山繭子という信頼すべき担当編集者にして親友を得、各方面からの祝福と賞賛の集大成のような優れた出来のアニメ化までされて、ようやくおずおずと自己評価を高めつつあるようだけど、コミケコミティアの会場には同じように苦しんでいるクリエーターが今も大勢いる。
 これを読んでいる方で同人イベント会場に足を運ぶ機会のある方は、手に取った本の感想をひと言ふた言でいいからどうか作者さんに伝えてあげて欲しい。本当にぎりぎりのところで戦ってるそうした作家さんにとって、そのひと言で踏みとどまれるきっかけとなりうるのです。
 逆に、それこそ今夏コミに向けて頑張っている作家さんには、このインタビュー記事は大きな励みになると思う。別にこれを読めば皆が皆、明日の羽海野チカになれるというわけではないけれど、同じような苦しみを経た「戦友」がそこにいるという事実ほど人の支えとなるものはないのだから。