積読日記

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『センゴク公式バトル読本 (KCデラックス )』

センゴク公式バトル読本 (KCデラックス )

センゴク公式バトル読本 (KCデラックス )

センゴク(1) (ヤンマガKCスペシャル)

センゴク(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 この手のファンブックというと、原作のカットを中心にキャラ紹介と新作イラスト数点くらいでお茶を濁すという、原作を持っている読者にはちっとも面白くない本になりがちである。せめて原作者かアニメ関係者のインタビュー記事くらい載せろよ、『バ○ブー○レード』ファンブック編集部(怒)。
 ま、それはともかく。
 それに対してこの本は『週刊ヤングマガジン』連載の戦国ものコミック『センゴク』の「ファンブック」というより、「副読本」という視点で編纂された本で、歴史作家から気鋭の歴史学者まで10人の専門家の評論文で彩られた非常に濃い本となっている。
 つか、こんなところで何やってんすか、東郷 隆センセ!(爆)
 ……いや、まぁ、『歴史・時代小説ファン必携 【絵解き】戦国武士の合戦心得 (講談社文庫)』みたいなのも書いてる人だからなぁ。
 
 ちなみに原作の『センゴク』は仙石権兵衛尉秀久という、秀吉軍団の若手切込み隊長みたいな役を担っていた武将を主人公に、信長・秀吉の天下取りへの戦いを描くという作品。これまでの戦国ものの中では割と脇役扱いだった彼にフォーカスを当てたことに象徴されるように、既存の戦国史観を再解釈した合戦描写や歴史解釈、青年マンガとして判りやすい出世物語と熱い戦闘シーンで高く評価されている作品。
 自分は単行本の方は押さえていないけど、連載で追いかけてます。
 現地取材を踏まえて戦闘者としてのリアリティと合理主義という視点で描かれる戦国絵巻は、語り尽くされたかのように思われていた「信長・秀吉もの」に新鮮な驚きを与えてくれて、結構、気に入っています。
 
 で、改めてこの本なんですが、良くも悪くも徹底した「副読本」としての立ち位置を踏み外さない本で、もっと攻撃的な論文を載っけても良かったんじゃないかとも思ったり。
 最近の戦国史研究で注目されるようになった人身売買などの戦国武将の負の側面や、東アジア経済と連結して急速に拡大していた国内経済とか、その辺に対する言及が……って、原作でもあまりやってない辺りは、それほど深堀りもできないか。
 後、テキストを充実してくれたのはいいのだけど、地図図版が少ないのはちょっと判りづらい。『信長公記』の地理描写の正確さを持ち上げるんなら、地図で示してもらわんと地元民かよほどの歴史オタでないとついてけないって。
 その辺の不満はあれど、基本的には歴史ファンもそれなりに納得できるよい「副読本」だと思います。
センゴク』のガイドブックというだけでなく、「戦国時代」そのものへの良いガイドブックでもあるので、歴史好きな方は買って損はないでしょう。
 ……ただし、自分で直接『信長公記』とか地方に残る一次資料とか読みこなしている人には、全然ぬるい話しかしてないので、そのクラスの方は手を出さない方が精神衛生上よろしいかと(ははは)。